19650922-01

Joy (John Coltrane)    (8分44秒)



【この曲、この演奏】

 9月2日のセッションで演奏されたコルトレーン作のこの曲が、黄金カルテット最後の演奏として、西海岸のスタジオで再演されました。

 さて演奏ですが、テナー・サックスがメインで1分半弱、ベースによるほぼ独奏が8分、そして再びテナー・サックスがメインで3分弱の演奏となっています。コルトレーンの演奏はテーマに重きを置き、この時期のフリーキーさは控えめな演奏となっています。そしてドラムスとピアノには、目立つ場面が用意されていません。

 つまりは、ジミー・ギャリソンのベースをたっぷりと味わい演奏と言えます。そのベース独奏は、創造性に富み、長丁場ながら飽きがこないものです。しかしながら演奏全体との意味では、その構成に首を傾げるものと言えます。

 私見で申すならば、ここでの演奏は今後の展開を考えて、コルトレーンがベースの可能性を探った演奏と言えるのでしょう。8月26日の「サン・シップ」のセッション、そして9月2日の「(ファースト・)メディテイション」のセッションが、私にとっては最後の黄金カルテットとなります。



【エピソード、本セッション】

 このセッションがコルトレーンのインパルス!時代を支えた黄金カルテットでの、最後の演奏である。1961年11月にヴィレッジ・ヴァンガードでのライブで顔を揃え、熱き演奏を繰り広げたこの四人だが、カルテットとしての演奏が始まったのは1961年12月21日とも言えるが、はっきりとこの四人での演奏との意味では1962年4月11日のことであった。これまでの四年弱、或いは3年半と言える黄金期間は、他のジャズ・バンドから見れば、長くもなく短くもないと言えるものであろう。しかしながらその内容の充実度からすれば、特筆すべき輝きを放ったジャズ・バンドの先鋒と言える。この後は、このカルテットに他のメンバーを加えて、数ヶ月の演奏を行うようになる。

 また録音場所は、サン・フランシスコにあるコースト・レコーダーズというスタジオである。インパルス!時代のコルトレーン・バンドのスタジオ録音といえば、ニュージャージーにあるヴァン・ゲルダー・スタジオであった。この1965年の8月26日には別のスタジオでのレコーディングとなったが、それとてニュー・ヨークにあるスタジオであった。その意味では異例中の異例の西海岸でのレコーディングである。資料07からこの時期のライブ記録を見ると、コルトレーン・バンドは西側でライブを行っていたようである。その辺りから想像するには、どうしてもの思いから設定したセッションであったのであろう。

 そこで録音されたのは1曲だけである。しかしそれはお蔵入りとなった。1972年に入り、アリス・コルトレーンによる装飾物となって、一応は世に出た。しかしながら生の姿で世に出たのは、それから6年後の1978年のことであった。



【ついでにフォト】

tp07006-110

2007年 アムステルダム


(2021年8月20日掲載)