Ascent (John Coltrane) (10分5秒)
【この曲、この演奏】
登る、登山、上り坂、(地位などの)向上・昇進、曲名にはこんな意味があるようです。この曲名での演奏記録は、本セッションだけです。
「Sun Ship : The Complete Session」が2013年に世に出て、この曲のマスター・テイクまでの過程が明らかになりました。それによれば、最初の演奏がマスター・テイクの根幹になっています。その後の5回の演奏は、フォルス・スタートなどでした。そして挿入用のテイクを2回録音しています。テイク1にテイク7と8を挿入して、マスター・テイクとなりました。
その内容ですが、ギャリソンによるベース・ソロが6分あります。ピッチカートでのベース独奏が続き、何かが起きる期待感を漂わせています。5分を過ぎたあたりでシンバルが加わり、これで1分弱続き、そこにコルトレーンとマッコイが加わっていきます。コルトレーンのテナーは静かに入りながら急上昇していき、真理を追求していく彼の姿を感じる、スリルあるものです。この四人での演奏は3分で終わり、再びギャリソンの世界が1分続き、演奏が終わっていきます。
【エピソード、「至上の愛」を聴いた若者たちの声】
パリに住む熱心なジャズ・ファンの若者の声である。
ぼくは「至上の愛」を生まれて初めて聴いたが、特に最後の部分の”賛美”が一番好きだ。トランペットはアマチュアとして多少は吹けるので、この”賛美”のところをトランペットで吹こうとしたが、あまりにもむずかしくてうまく演奏できなかった。他のレコード、とくに「インプレッションズ」を聴いたとき、コルトレーンはドビュッシーの影響を受けていると思った。こうしてコルトレーンの音楽を知ったいま、ぼくは彼のバラードから平安にも似た静かな幸福を与えられている。だが、彼がものすごい速さでロー・ピッチから急にハイ・ピッチに上りながら演奏をするとき、ぼくは椅子の端にすわったままひとりでに背筋をまっすぐのばして、その曲に夢中になってしまうのだ。 バーナード・ピル
(資料01より)
【ついでにフォト】
2013年 みなとみらい
(2021年8月11日掲載)