19650826-09

Attaining (John Coltrane)  (11分22秒)



【この曲、この演奏】

 目標を数値で設定できる場合はその達成度合いが明確になりますが、「何事にも動じない人間になる」というような場合には、達成したのかどうかの尺度は難しいものとなります。

 「達成する」「成し遂げる」との意味のこの曲ですが、年間に三枚のアルバムを制作するなどとの目標ではないことは明らかでしょう。この時期のコルトレーンですから、きっと崇高な目標を立ててのこの曲名なのでしょう。

 コルトレーンの演奏記録は本セッションだけであるこの曲ですが、この日に4つのテイクが収録されました。そして3回目のテイクに4回目のテイクを挿入してマスター・テイクとなり、AS-9211「Sun Ship」に収録されました。

 そのマスター・テイクの演奏は、思慮深いテナー・サックスの響き、リズム陣の祈りの寄り添い、これで瞑想のテーマを演奏していきます。コルトレーンは演奏最後までアドリブはなく、このテーマに専念しています。ドラムスの気合い入れを挟みながらこの演奏が続き、3分過ぎからマッコイのソロとなり、これは四分間続きます。ベースの刺激的なラインも印象的な中でマッコイは、コルトレーンの瞑想を深めようとしているのかとめようとしているのかは別にして、刺激的なピアノ演奏が聴けます。

 1分弱の訴えのドラム・ソロの後に、再びコルトレーンが登場しテーマを演奏していきますが、ここでの四人の強固な結びつきは聴きごたえあるものと、私は感じました。



【エピソード、このセッションの10日前のライブの様子、その1】

 (一九六五年)八月一五日の日曜日にシカゴで開かれた、ダウンビート・ジャズ・フェスティヴァルで、ちょっとした騒ぎがあった。同誌の九月二十三日号に掲載されたバック・ウォームズレイのリポートはこうだった。

「休憩のあと、ジョン・コルトレーン四重奏団の出番だった。テナーのアーチー・シェップが特別に参加していた。演奏は、はっきり言って、今までに聴いたことがない位、ひどいものだった。といっても全員の責任ではない。ピアノのマッコイ・タイナーと、ベースのジミー・ギャリソンの独奏は、イマジネーションに満ちあふれた、すばらしいものだった。ところが、コルトレーンとシェップの二人は、ただただ楽器を警笛や叫び声のように吹き鳴らし、まるで騒音ごっことしか思えなかった。これは音楽と言えないであろう。その四十五分間も、えんえんとやられた曲は、七千五百人の観衆にとっては、まったく最低の出来としか思えなかったのである」

(資料01より)

 このライブの記録は資料07で確認できるが、演奏曲名は不明となっている。また私家録音はあるようだが、世には出ていない。この八月一五日は「アセンション」から約二ヶ月後だが、「アセンション」発売の半年前である。この時期でのバック・ウォームズレイ誌のレポートは興味深いものであり、その意味からも、どんなに音が悪くても、その演奏を聴きたいものである。

 さて資料03にも、このダウンビート・ジャズ・フェスティヴァルの記述があるので、次回に取り上げる。



【ついでにフォト】

tp13024-008

2013年 みなとみらい


(2021年7月28日掲載)