Ascension (Blue Waltz)
(John Coltrane) (21分32秒)
【この曲、この演奏】
1ヶ月前に大人数でレコーディングしたこの曲を、前日のアンティーブに引き続き、このパリでもコルトレーンはコンボで演奏しました。
その演奏ですが、前日よりも6分長く演奏しています。前日の最後のドラムスの3分を除いて考えれば、ほぼ倍の演奏時間となっています。
コルトレーンのテナー・サックスが主体となってテーマを2分近く演奏しています。続くのはマッコイの6分近いピアノ・ソロですが、これはマッコイとエルヴィンの一騎打ちと言った方が正しいでしょう。この後に30秒ほどのドラムス一人演奏となり、ギャリソンのベース独奏へと続きます。
このギャリソンのベース演奏は6分半を超えるもので、内容はピッチカートとアルコでのものであり、時には合わせ技のような演奏もあり、聴き所満載のものです。
そして最後にコルトレーンの6分を超えるテナー・サックス演奏となっています。
コルトレーンを含めて全員が感性をぶつけあった強い演奏であり、心が清らかになっていく世界を表現しています。コルトレーンは黄金カルテットでのこの曲の演奏に、可能性の深さを感じたと思います。しかし黄金カルテットだけでの演奏は残り2ヶ月ですので、その可能性を追求することはありませんでした。
【エピソード、曲名について】
テーマを聴けば「Ascension」と分かるものだが、ブートで発売された当時は「Blue Valse」或いは「Blue Waltz」とクレジットされていた。「Waltz」のフランス語が「Valse」なので、この二つは同じ意味である。ではなぜこの曲名でクレジットされたかだが、これについては資料07に次のように書かれている。これは Michel Delorme氏が2006年11月11日に資料07の編者にe-mailで知らせたものである。
私(Michel Delorme)が、このフェスティバル(アンティーブ・ジャズ・フェスティヴァル)を収録したラジオ・フランスの jean-Christrophe Averty に、この曲名を付けた経緯に尋ねたところ、次のようなことであった。コルトレーンが演奏が終わったところで、私が秘書にコルトレーンにこの曲名を訊ねさせたら、何だか「Blue Valse」のようにコルトレーンの回答が聞こえたとのことであった。そこでこの曲の名を「Blue Waltz」を意味する「Blue Valse」にしたんだ。
1ヶ月前にコルトレーンは「Ascension」を録音したが、それが発売されたのは1966年に入ってからなので、この曲を Michel Delorme氏が知らなかったのは当然であった。ただ、「Ascension」を「Blue Valse」と言い間違える、或いは聞き間違えることは考え難い。もしかしたらコルトレーンには特別な意味があって回答だったのかもしれない。
【ついでにフォト】
2015年 みなとみらい、横浜
(2022年12月26日掲載)