19650628 -03.04

Ascension Ed. I (John Coltrane)

(Part 1 18分55秒、Part 2 19分42秒、計38分37秒、資料07記より)




【この曲、この演奏】

 この「アセンション」の国内盤CDでの今井正弘氏の解説から、この演奏について引用します。

 ここで試みられるサウンド作りは通常捨てられていく、無調の世界の掘り起こしである。無調と調整というのは、対立関係にあるのではなく、調整を追い求めれば求めるほど、無調が現れるわけで、その際音楽として成り立たせるために、無調を排除して作曲ないし、演奏させるわけだが、無調とて音楽を構成する重要な役割を持つわけで、コルトレーンは、そこに目を付け、無調と調整を関連づけてこの「アセンション」に挑んだのである。


 さて二度目の演奏内容ですが、最初のテイクよりも統制が取れているテーマが4分ほどあります。これは洗練されてきたのか、疲れてきたのかの、どちらかによるものでしょう。

 続くのはコルトレーンの2分強のソロです。これは、いつものコルトレーンの雰囲気が漂うものです。

 ハバードらしきトランペットの頑張りが印象に残る2分弱のテーマを挟んで、トランペットのデューイ・ジョンソンの2分ほどの、迷いがあるのかなと感じるソロとなります。

 1分ほどのテーマとなり、サンダースのソロへ続きます。このソロは2分強のものですが、なんだか控えめの演奏となっています。

 そしてベース2本の苛立ちが感じる部分がある1分半弱のテーマを挟んで、ハバードの3分ほどのソロとなります。やる気満々の、快調なソロです。ここまでは最初のテイクと同じソロ順で来ており、LPレコードでは、ここでA面終了となります。

 次にはハバードの頑張り目立つテーマが1分強あり、テナーのシェップの2分半強のソロとなります。若干の出遅れでスタートしたシェップですが、意気込みはあるが空回りしているような演奏です。

 1分半ほどのテーマがあり、続くのはテナーのチカイの1分半強のソロです。

 また1分半ほどのテーマがあり、アルトのブラウンの責め立てる2分ほどのソロとなります。

 1分弱のテーマの後には、マッコイの2分ほどのソロになるのですが、なんとも静かなものです。途中でエルヴィンが突っかかっていき、マッコイがやる気を見せますが、迫るものがないままソロが終わります。

 続いてベース2本のソロですが、最初のテイクとは違い、二人ともアルコでの演奏です。2分弱の途中からドラムも加わっていきます。この三人での演奏は、スリリングで良いものです。

 そして、最初のテイクにはなかったエルヴィンのソロとなりますが、30秒にも満たない演奏で終わります。

 最後に4分半ほどのテーマとなり、実にまとまりがあるものです。しかしながシメへの持って行き方を決めていなかったのか、全員の演奏がそわそわしています。終盤でエルヴィンが幕引きを図り、なんとか演奏は終わりとなりました。


 全体を通しては、最初のテイクよりまとまっており、聴きやすいものです。最初のテイクと続けて聴くと、この2回目の演奏には心地よさを感じます。しかし「聴きやすい」「心地よさ」は、ここでは決して褒め言葉になるものではなく、この2回目の演奏は間違って発売され、すぐに差し替えられました。



【エピソード、本セッション、資料13から、その2】

 このセッション、そしてA(S)-95「アセンション」という作品について資料13にある記述を、前回に続いて引用する。

 (ABCの法律顧問のアラン・バーグマンが、この「アセンション」のテスト盤を聴いて、唖然とした顔でボブ・シールを見たときに、ボブ・シールは)「そのアルバムはいずれ古典的名盤になるんだ」と言った。

 リリースされるや「アセンション」はコルトレーン信者の間でもすぐに話題となり拒否された。コルトレーンは何を考えているんだ? これは演奏が激しいとか、長いとかいう問題ではなかった。この音楽はあまりに音が密に入り組んで、何層にも重なっており、おまけに一般的な構成が見当たらない。いや、構成を無視しているという者もあった。もう少し我慢強い人は「アセンション」を全曲聴き、気力を殺がれながらも面白いとは思ったが、不可解さに変わりはなかった。

 アルバムがモヤの中に包まれているころに、さらにもう一つの事情が重なった。シールがこれに気づいたときは、すでにもう間に合わなかったが、実はインパルス!が最初にリリースした「アセンション」は2回の録音のうちコルトレーンが没にした方だったのだ。

 「おれはコルトレーンに聴いてもらおうと両方のテープを送ったんだけど、彼がどっちを選んだのか忘れてしまった。偶然にもリリースしたのは没になった方だった。それでコルトレーンに了解をとって、ジャズ仲間にちょっとしたおふざけをしてやることにしたんだ。最初のレコード生産が一段落したところで、おれはマスターを入れ替えた。ジョンが選んだ方とね。それでレコードの真ん中の余白のところに「エディションII」って書いておいたんだ。・・・だから「アセンション」には二つのヴァージョンがあるってわけさ」


 余談ですが・・・、
 私は「アセンション」のオリジナル盤を4枚、いや4種類持っています。最初のリリースと「エディションII」、それぞれモノとステレオでです。(余談ではなく自慢でした)



【ついでにフォト】

tp11008-143

2010年 ペナン、マレーシア


(2021年7月23日掲載)