19650616-09

Untitled Original 90320
(John Coltrane) 
(10分48秒)



【この曲、この演奏】

 1978年にこの演奏が世に出た際には、「無題(Untitled Original)」の未発表曲をいくつか収録するため、マトリクス・ナンバーを曲名に付けました。録音当時のことに関しては資料09には、「プロデューサーのボブ・シールのノートには『クレッセント3」と記載されていた」とあります。一方で資料07には、パラマウントのセッション・ログに「No Title」と書かれていたとなっています。

 さて演奏ですが、曲自体はテーマらしきものがかすかにあるもので、混沌・絶叫コルトレーンの、凄み溢れるアドリブが全体を包んでいるものです。この曲も、ライブでのアドリブの展開を何とかスタジオで再現しようとした取り組みと感じます。バンドの四人の息遣いが、そして進むべき道への思いが漂っている演奏とも言えるのでしょう。



【エピソード、ロジャー・マッギン】

 私は空を飛ぶのが好きです。トレーンの音楽には、空を飛翔するフィーリングがあります。そこには飛翔の、あのスリルと恐怖さえあって私を魅了するのです。 ロジャー・マッギン


 ロジャー・マッギンは、その夏、バーズのメンバーとして国内を演奏旅行していた。連中はキャンピング・カーで一ヶ月ばかり移動していたのだが、その間たった二本のカセット・テープで旅の無聊を慰めていた。一本はコルトレーンの「アフリカ」と「インディア」で、もう一本はラヴィ・シャンカールのラーガに基づいた演奏である。みんな両方とも聴いていたが、マッギンはすっかりコルトレーンに傾倒してしまった。「彼の方向性は他者と全く異なっていたし、彼のサキソフォンは何かを訴えているようだった」。みんなで一緒にレパートリーをつくる時にも、マッギンはシャンカールとコルトレーン、特に後者のフレーズを取り入れるよう提案した。そういえば、バーズのあの魅惑的で忘れ難い「エイト・マイルズ・ハイ」には、二人の音楽の影響が認められなくもない。マッギンはこう説明する。「最初のブレイクはコルトレーンのフレーズそっくり、それからあとの展開も、トレーンのスケールとモードをお手本にしてやったのです。特に彼のスピリチュアルな感情の動きは、ぼくを超自然的な瞑想の世界へさそい込みました」。

(以上は全て資料01より)



【ついでにフォト】

tp05042-128

2005年 香港國際龍舟邀請賽2005 尖沙咀東


(2021年7月21日掲載)