Living Space (overdubbed ss)
(John Coltrane) (10分24秒)
【この曲、この演奏】
曲名についてですが、パラマウントのセッション・ログには「The Living Room」とあり、また録音テープにあるスタジオでのアナウンスでは「Another Tune」となっていました。(資料07)
さてテイク2での演奏に、コルトレーンはさらにソプラノ・サックスで重ね録音を行いました。その時期についてはどの資料にも記述がありませんが、恐らくはこの日のことだったのでしょう。ソプラノで演奏したテープに、さらにソプラノで重ねて演奏です。
さて内容ですが、オーバーダブにより、テイク2に魔法をかけたように深みが増しています。ソプラノを重ねているのは、最初と最後の、リズム陣がリズムを取らずにコルトレーンに寄り添っている部分だけです。しかし、私にはベースのいじっているのでは、ピアノも、などと感じてしまいますが、これはコルトレーンの魔法のなすところなのでしょう。
この録音から7年後に、これにアリス・コルトレーンがオーケストラを重ねました。そしてその年に発売され、それがこの演奏が初めて世に出たものです。
さてコルトレーンの純粋な気持ちで演奏された、このソプラノ・サックス重ね録音ものは、1978年にようやくの発売となりました。
【エピソード、ジョー・ゴールドバーグの著書から その13】
1965年に刊行されたジョー・ゴールドバーグの著書「Jazz Masters Of The Fifties」の中の、コルトレーンに関する思慮に富んだ文章の日本語訳が資料04にあるので、数回に分けて掲載する。
家具は質素そのもの。飾りと言えば、壁にかかったセラミック製の盾くらいだ。コルトレーンはとても愉快な男で、ナイーブですらある。彼の所作から、その洗練された音楽性をうかがい知ることはできない(「文学的な人がよく言うんだが」とセシル・テイラーは言った。「ジョンと話したあとは、いつでもいい気分にさせられるんだ」)。「アメリカの白人は」とジェイムズ・ボールドウィンは書いた。「いや、どこの国の白人でもそうだが、彼らは黒人を求める、あるいは欲する固有の価値を自分たちが掌握しているという考え方をなかなか捨て去ることができずにいる」。この意見は、インドやアフリカやブルースから音楽的イマジネーションを得てきた物静かで純朴な男、コルトレーンが演奏するジャズの中に、力と危険性が内在することの究極な意味を暗に示している。
【ついでにフォト】
2005年 香港國際龍舟邀請賽2005 尖沙咀東
(2021年7月18日掲載)