19650610-07

Suite (John Coltrane)  (21分19秒)

  Part 1 - Prayer and Meditation: Day

  Part 2 - Peace and After

  Part 3 - Prayer and Meditation:
               Evening

  Part 4 - Affirmation

  part 5 - Prayer and Meditation: 4 a.m.




【この曲、この演奏】

 資料07によれば、パラマウントのセッションログではこの曲は、「Number 5」と書かれているそうです。

 資料09にはこの曲について、「これは『至上の愛』に次ぐ組曲でもあり、これ以降『サン・シップ』、『メディテーション』といった組曲形式の演奏が記録されていくことになる」「カルテットのメンバーが各パートでソロを担当し、全体として変化に富みバランスの取れた構成・演出がなされている。コルトレーンは全パートでソロを取り、見事なヴァリエーションを聴かせる」と説明しています。

 私はこれまでこの曲に接するときに”組曲”と意識して聴いたことがなかったのですが、今回はそこにも着眼して聴いてみました。

 その演奏ですが、主テーマが3回登場してきます。それは、追求することの美しさと厳しさを表現したもので、コルトレーンのテナー・サックスに強い意志を感じます。

 「パート1」は3分強の演奏で、まさにこのテーマを強く提示したものです。

 「パート2」は8分ほどであり、主テーマに対して何かを問いかけるような副テーマと言ったものです。ここでの圧巻は4分強に渡る、ギャリソンのピッチカートでのベース独奏です。コルトレーンの問いかけに対する、ギャリソンの返答のように私は感じました。

 「パート3」と「パート4」についてですが、私には7分半の一つのパートのように感じました。再びコルトレーンが主テーマを取り出し、力強い演奏となっています。トリオでのマッコイのソロが1分半、エルヴィンのドラム・ソロが1分、それぞれ入っています。

 「パート5」は2分半ほどで、「パート1」の再演といった内容です。

 私としては「パート1」と「パート2」だけでも良かったかなと思いますが、聴きごたえ十分に21分でした。



【エピソード、ジョー・ゴールドバーグの著書から その12】

 1965年に刊行されたジョー・ゴールドバーグの著書「Jazz Masters Of The Fifties」の中の、コルトレーンに関する思慮に富んだ文章の日本語訳が資料04にあるので、数回に分けて掲載する。


 コルトレーンは、十二音技法による作曲を考えているようだ。連続的にインプロヴァイズすることは不可能では、と尋ねられたコルトレーンはこう答えた。「ルールなんて知ったことか。大切なのは感情なんだ。ソロで十二音すべてをプレイしたっていいんだよ」

 作曲に力を入れるようになったが、コルトレーンの感情を焚きつける原動力は今でもインプロヴィゼーションだ。もし私たちが、(批評家兼サックス奏者のドン・)ヘックマンがいうように、”音楽と折り合いをつけ”、そのほとんど破壊的なエネルギーの威力を理解しようとするなら、コルトレーンその人を理解するにはいささか努力を必要とする。

 手がかりの一つは、ロングアイランドのジャマイカにあるコルトレーンの自宅(監修注=セント・アーンズの家)だ。書斎には数枚のレコードしかないが、そのほとんどがインドの民謡なのだ。リビングルームの大部分を長いこと占領しているのが、借りもののハープ。”ハーモニーの勉強になる”と考えて、彼が弾き始めたものだ。コルトレーンのおそらく唯一の趣味が、裏にはに置かれた望遠鏡だろう。滅多にないことだが、時間ができたらそれを覗いている。コルトレーンのグループは休みなく働いている。「何をして熱心なミュージシャンと呼ぶのかわからないけど」と彼の妻は言う。「彼が練習の虫なのは確かね。ホーンを咥えたまま眠っている夜も、何遍かあったわ」



【ついでにフォト】

tp13058-070

2013年 みなとみらい


(2021年7月16日掲載)