19650610-04

The Last Blues (John Coltrane)
                        (4分22秒)




【この曲、この演奏】

 コルトレーン作のこの曲ですが、1963年4月に演奏したらしいとの記述が、資料07にあります。これはラヴィ・コルトレーンが所持している私家録音を、資料07の執筆陣が聴いて得た内容です。メンバーは、ドルフィー(as), ギャリソン、そしてロイ・ヘインズという、ピアノレス・カルテットでのもので、録音場所は不明とのことです。

 はっきりと記録に残っているには本セッションでの演奏だけです。ただしこれは長らくお蔵入りのままで、1998年にようやく世に出ました。

 さて1963年と同様にピアノレスでのここでの演奏ですが、曲調は笑顔のブルースで、即興で作ったようなフレーズが印象に残ります。トリオでごっつい雰囲気と、にこやかな雰囲気を併せ持った演奏内容です。アトランティック時代の1960年10月に、数多くの曲を吹き込んだセッションを思い起こさせる演奏です。

 それはこの時期のコルトレーンの演奏にはあまり出てこないものであり、またこの日の5曲の流れを見ても、この曲の存在は少し浮いたものです。

 この演奏はIMP 12462 「Living Space」というアルバムに収録され、1998年に世に出ました。




【エピソード、ジョー・ゴールドバーグの著書から その9】

 1965年に刊行されたジョー・ゴールドバーグの著書「Jazz Masters Of The Fifties」の中の、コルトレーンに関する思慮に富んだ文章の日本語訳が資料04にあるので、数回に分けて掲載する。


 ”売れっ子サイドマン”だったコルトレーンは、今や押しも押されもせぬリーダーとなった。たとえ彼のソロなしで演奏が続いているところでも、すぐにコルトレーンの曲だと分かる。彼は一体どうやってこの新境地に到達したのか、いつかじっくり訊いてみたい。

 生のコルトレーンを見ると、人は余計に混乱する。物静かで、愛想が良く、シャイで人懐っこい。服装は地味で、物腰は柔らかい。セットの合間には、楽器ケースに座って本を読んだり、リンゴをかじったりしている。ソロが終わると、マイルス風にステージを降りて歩き回る。オーネット・コールマンなど、セッションを見にきた友人に声をかける ー マイルスだったら、クラブの片隅にじっと座って演奏を聴いているかもしれないが。ところが、ステージ上のコルトレーンは情熱の塊で、音楽に没頭する。サックスを咥えた瞬間、頭の中のスイッチがばちっと入るのだ。音楽に入り込んでいくにつれ、コルトレーンは身を反らせ、目をきつく閉じる。まるで一瞬の狂気に取り憑かれたように。そしてソロが終わると、ステージの袖に引っ込み、最近のお気に入りの細長い葉巻に火をつけて、リードの調節を始める。



【ついでにフォト】

tp13063-166

2013年 みなとみらい


(2021年7月13日掲載)