19650526-17

One Down, One Up (John Coltrane)
                               (15分31秒)



【この曲、この演奏】

 この曲名でのインパルス!での録音という意味では、この年の3月28日にヴィレッジ・ゲイトで行われた、リロイ・ジョーンズ主催のライブで行われた演奏に続くのが、この日のスタジオ演奏であります。
 その3月のライブはインパルス!から正式発売されましたが、この曲はお蔵入りとなり、2002年になって全てに内容が発売されました。

 そしてこの5月26日の「One Down, One Up」は、1977年に発売されました。

 さて演奏ですが、早口まくしたて型コルトレーンの凄みが凝縮されている演奏です。3月のヴィレッジ・ゲイトでは最初に長尺のベース独奏がありましたが、演奏時間と構成は同じです。しかしこの日のスタジオでの演奏の方が、圧倒的に集中力の継続が高いものです。

 コルトレーンのタナーを中心にしたカルテットでの集中力が途切れない8分弱、攻めまくるマッコイのピアノをフューチャーしてのトリオでの3分半、そして再びカルテットでコルトレーンとロイ・ヘインズの丁々発止もある4分間と、殺気立つ演奏に震えます。



【エピソード、ジョー・ゴールドバーグの著書から その8】

 1965年に刊行されたジョー・ゴールドバーグの著書「Jazz Masters Of The Fifties」の中の、コルトレーンに関する思慮に富んだ文章の日本語訳が資料04にあるので、数回に分けて掲載する。


 以上のこと(前回までの記述)を念頭に置いて、マイルス・デイヴィスのアルバム「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」を聴けば、おおいに蒙を啓かれることだろう。このアルバムが録音された当時のコルトレーンは、かなり挑戦的な演奏をしていたからだ。このアルバムでコルトレーンは表題曲の「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」とスペイン風の「テオ」でソロをとっている(「ある日の午後にこっそり忍び込んで吹き込んだ」とは本人談)。マイルス・グループの過酷だが慣れ親しんだ空気が支配する中、コルトレーンはアルバム中、もっとも刺激的かつ情熱的な音楽に貢献しただけでなく、その二つのソロは彼の長いキャリアにおいてもベストに数えられる出来だった。マイルスがコルトレーンを呼び戻そうとしているという噂が流れたが、たとえコルトレーンよりもマイルスのほうがクラブに客を安定して呼べるとしても(「彼はビッグ・ネームだからね」とコルトレーンは言う。「ソニーでも私でも、好きなプレイヤーを雇ってその演奏を聴くことができる。マイルスは金持ちだ。そして音楽を聴くことを愛している」)、二人のタッグが復活する可能性は考えにくい。



【ついでにフォト】

tp15030-030

2015年 みなとみらい


(2021年7月11日掲載)