19650526-04

After the Crescent (John Coltrane)
                                 (13分39秒)



【この曲、この演奏】

 この曲について資料09には、次の記述があります。

 プロデューサーのボブ・シールのノートには「クレッセント -2」と記載されているが、「クレッセント」とは異なった曲である。むしろ(翌月の6月10日に収録されて、アルバム「トランジション」に収録された)「SUITE/組曲」を連想させるモチーフを持った曲である。

 さて演奏ですが、何かにせき立てられるように、何かを熾烈に訴える、そんな内容です。バックはリズムを取らずに、テナーのコルトレーンに寄り添うように、テーマが始まっていきます。1分ほどしてからメンバーがリズムを取り始め、この演奏で何かが起きるのではと予感させます。

 この2分ほどのテーマが終わってからは、マッコイのピアノでの4分半ほどのソロになります。叩きつけるピアノ、マッコイの凄みが伝わってきます。

 それを引き継ぎ、最後までの7分の演奏となる、コルトレーンのソロとなります。コルトレーンも凄いのですが、ロイ・ヘインズの暴れっぷりもかなりのものです。テナーとドラムスがソロを取っている7分間、カルテットの凄みが溢れ出している7分間と言えるのでしょう。

 1964年に一つのピークに達した黄金カルテット、ここではドラムスがロイ・ヘインズとなり別の魅力が加わり、それらがこの演奏に詰まっています。

 この演奏は1978年に世に出ました。



【エピソード、本セッション】

 このセッションはアルバム「トランジション」用のセッションと言える。この日の収録曲数は4曲であるが、アルバム「トランジション」に収録されたのは「Dear Lord」だけである。

 メンバーに目を移すと、ドラムスにはロイ・ヘインズが参加している。1963年4月から8月までのロイ・ヘインズの代役は、エルヴィンの麻薬によるものであった。しかし今回は、この代役の理由が不明である。このセッションの11日前のスタジオ録音、そして2週間後にセッションにはエルヴィンが演奏している(資料07)。また資料08のエルヴィンの演奏記録によれば、この日に他の仕事をしていたわけではない。

 ロイ・ヘインズはコルトレーン・バンドに何度か参加してきた。ニューポートでの「マイ・フェイヴァリット・シングス」の名演など、コルトレーン・ファンのみならず、多くのジャズ・ファンに愛される演奏を残してきた。ネット上の一部のコルトレーン愛好家には、ロイ・ヘインズを黄金カルテットにメンバーにすべきだったというコメントを残す方も、いるようだ。

 そんなコルトレーンとロイ・ヘインズに共演であるが、どうやらこのセッションが最後のようである。



【ついでにフォト】

tp15012-119

2015年 みなとみらい


(2021年6月28日掲載)