Nature Boy (E.Ahbez) (計 9分19秒)
【この曲、この演奏】
この曲のライブ演奏は数回あるようですが(資料07)、音源が残されているのは本セッションだけです。1ヶ月ほど前の2月18日のスタジオ・セッションでこの曲の演奏に確かな手応えを得たコルトレーンでしたので、リロイ・ジョーンズ主催のこのライブ、そしてインパルス!が公式録音を行うこのライブでこの曲を取り上げたのかと、私は想像します。
さて演奏ですが、出だしでつまづいてしましました。1分15秒演奏したところでブレイクダウンとなり、気を取り直して8分4秒の演奏を始めます。
その演奏ですが、ほぼコルトレーンで40秒ほどテーマを奏でた後、カルテットでの6分半の演奏に移ります。しかしこれは全てがコルトレーンの独断場であり、特にカルテットで演奏しはじめてから1分40秒ほどからは「神がかり」コルトレーンとなっていきます。このコルトレーンの集中力はさすがの物です。
そしてあとテーマに移り、ドラム・ロールとなり、続けてベース・ソロで「One Down, One Up」の演奏に突き進んでいきます。
【エピソード、このライブ】
黒人ジャズ・ライターのリロイ・ジョーンズが黒人音楽家の地位向上を目的として主催した”ブラック・アーツ・レパートリー・シアター”基金の為の”ニュー・ジャズ・コンサート”がN.Y.のクラブ”ヴィレッジ・ゲイト”で行われ、コルトレーン”カルテット”もこれに参加した。他にアルバート・アイラー(ts)、アーチー・シェップ(ts)、チャールス・トリバー(tp)等が参加した。(資料09)
このライブが1966年に、Impulse! A(S)-90「The New Wave In Jazz」として発売された。コルトレーン・カルテットは(事実上)二曲を演奏しているが、その中の「Nature Boy」が、このアルバムに収録された。そして長尺のベースの独奏とそれに続く「One Down, One Up」は、長らくお蔵入りとなっていた。
2002年にインパルス!からCD4枚組で、「John Coltrane Legacy」が発売された。これはコルトレーンの息子さんでありジャズマンのラヴィ・コルトレーンが選んだ内容となっている。収録曲はインパルス!が中心でありながら、プレスティッジやアトランタでの演奏も収録されている。これだけならばコルトレーン初心者向けのボックス物なのだが、その中にこのリロイ・ジョーンズが主催したコンサートでのコルトレーン・カルテットの演奏がまるまる収録されている。
アルバム「The New Wave In Jazz」に収録された「Nature Boy」はブレイク・ダウンとなった演奏も含めて、そしてお蔵入りとなった「One Down, One Up」はベースの独奏も含めて、このCD4枚組に収録された。それは、ブレイク・ダウンを除けば、続けての演奏、30分の演奏となっている。
【ついでにフォト】
2011年 ペナン、マレーシア、タイプーサム
(2021年6月23日掲載)