Acknowledgement (take 2)
(John Coltrane) (9分22秒)
【この曲、この演奏】
シェップとデオヴィス入り六人編成でパート1の「「Acknowledgement、承認」、2回目の演奏です。
「A Love Supreme」と本編ではコルトレーンがささやく短いメロディ、演奏中にはギャリソンのベースが刻むこのリフ、コルトレーンはこの部分にシェップのテナーを入れたかったのが真意なのかなと感じました。しかしながらシェップのリフは繰り返すうちに暴れていき、気が付けばコルトレーンとのバトルになっています。もちろん、聴く方はこれを興味深く味わえます。
出だしでのシェップの戸惑い、最後でのベース二本の展開がテイク1ではそれぞれの存在を浮かび上がらせるものでしたが、このテイク2ではベース二本の融合を試みている展開、これらも聴き所と言えるでしょう。
【エピソード、至上の愛、構想の出来上がり 資料03】
一九六四年の晩夏、彼は新しい組曲の構想を書いた紙を手にし、「まるでモーゼが山から下りてきたような感じで」新居の二階から降りてきた、とアリス・コルトレーンは語っている。レコーディングする音楽の準備が事前にこれほど洗いざらい出来上がっていたのは初めてのことだった。
彼が「至上の愛」のための音楽的アレンジをしたためた紙は、二〇〇四年末、アリス・コルトレーンが売却のためガーンジーのオークション・ハウスに出品したとき、一般に公開された。それはコルトレーンが、九人編成 ー テナー・サックスと”もうひとりのホーン奏者”、ピアノ、トラップ・ドラムス、二本のベース、二つのコンガ・ドラムス、一つのティンパレス ー のグループを想定してこの作品を書いたことを示唆している。
さらにここには彼の考えていた音楽の流れが書かれている。パート1の終わり近くの箇所に、彼は「カルテットの伴奏によるサックスのソロのあと、『至上の愛』のテーマをEフラット・マイナーに変え、全ての打楽器奏者がマルチ・リズムを叩き、声を発する」と記し、エンディングに向かう箇所には「エンディングはオーケストラにより、できるだけ並外れたレベルに達するよう努める・・・ハーモニーを至福の状態にまでもっていく」と記している。紙の一番下には「最終コードはアラバマの最後のコードのような音で」と書き込まれている。
けっきょく九人編成バンドによる録音はなされなかった ー 彼がやったのはカルテットにアーチー・シェップとアート・デイヴィスを加えたことだけであり、そのトラック、「承認」の別ヴァージョンは、アルバムに使われることなくお蔵入りしてしまった。だが彼のアイディアそのものは実現した。彼は「至上の愛」を一九六四年一二月九日、一日でレコーディングした。それは単なる一連の作品群のひとつであるというだけにとどまらず、彼の過去と未来を理解するための手がかりを提供する、全キャリアのなかでも中核をなすアルバムとなった。
(資料03より)
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい、ラ・マシンによるクモ
(2021年6月16日掲載)