19641210-01

Acknowledgement (take 1)
(John Coltrane)        
(9分9秒)



【この曲、この演奏】

 コルトレーンによる「至上の愛」の当初のデザインは九人編成での演奏であったことを考えると、前日のカルテットでの演奏のほかに、人数を増やしての演奏を試みることには納得できるものです。しかしながら何故にシェップなのか、アート・デイヴィスなのかは、各資料には掲載されていません。

 この六人編成のバンドで、パート1の「「Acknowledgement、承認」の録音に臨みました。

 さて最初の演奏ですが、シェップは彼なりにこの曲でのコルトレーンの意図を理解して、この演奏に望んでいます。そのアプローチの仕方が、コルトレーンの考えとは違ったのかもしれません。コルトレーンは全体としての調和を求めていたのでしょうけど、シェップは丁々発止での表現を望んだようです。

 塩辛く掠れたシェップのサックスをこのバンドに入れれば、必然とサックスの丁々発止を聴きたくなるものです。その点においてこの演奏は私にとっては聴き所満載であります。恐らくはコルトレーンも演奏を通して、シェップの考えを受け入れてきたのかとも感じました。

 最後のギャリソンとデイヴィスのベース二本での演奏も、興味が尽きないものでした。



【エピソード、このセッション】

 「至上の愛」の12月9日の本セッションの後に、黄金カルテットにテナー・サックスのアーチー・シェップ、ベースにアート・デイヴィスを加えた六人編成で、コルトレーンは「至上の愛」の録音に挑んだ。ただし演奏されたのはパート1の「「Acknowledgement、承認」だけであった。従って本セッションの意図は、4つのパートを全て演奏することであったのか否かは、どの資料を見ても不明である。1983年刊行の資料09を見ると、音源は聴けずとしながらも、4つのパートを演奏しているかの記述になっている。また1995年刊行の資料06によれば、パート1と2が演奏されたとなっている。

 パート1の「「Acknowledgement、承認」だけを何度も演奏している。最後までの演奏は4回あり、最初の2回は2002年にVerve/Impulse! 314 589 945-2 (A Love Supreme, Deluxe Edition, 2002)で世に出た。長年に渡り、シェップ入り「至上の愛」に強い関心を寄せていたコルトレーン愛好家には、最高の贈り物となった。残りの2回は2015年にVerve/Impulse! 0602547489470 (A Love Supreme, The Complete Masters, 2015)として世に出た。

 なおこのセッションでは、本セッションでのパート1「「Acknowledgement、承認」へのオーヴァーダブのためのコルトレーンのささやき、そしてパート4「Psalm、賛美」の最後の30秒のためのオーヴァーダブが、コルトレーン、ギャリソン、エルヴィンの三人での演奏が、それぞれ収録された。



【ついでにフォト】

tp09020-029

2009年 みなとみらい、ラ・マシンによるクモ

(2021年6月15日掲載)