Blue World (John Coltrane) (6分1秒)
【この曲、この演奏】
CD「ブルー・ワールド」では、この曲をコルトレーン作とし、曲名を「ブルー・ワールド」としています。この曲を聴いた方は、インパルス!A(S)-21「Coltrane」に収録されている「Out of This World」を思い浮かべることでしょう、1962年6月19日に黄金カルテットで収録された「Out of This World」は、マーサー&アレンによる曲です。これをこの「今日のコルトレーン」で取り上げた際に私は、「私はこの曲を、長らくコルトレーンのオリジナル曲だと思っていました」とコメントしました。コルトレーンの精神世界そのものと感じたからです。また原曲のイメージを、よりコルトレーンの世界に引き寄せた演奏でした。
この1964年での演奏は、1962年のそれをさらにコルトレーン寄りにしているものであり、もう既にコルトレーン作の曲なのだ、との考えが2019年にこれを世に出したヴァーブ/インパルス!の方達は考えたのでしょうか。
さてこの1964年の演奏ですが、1962年のそれの半分ほどの演奏時間であり、コルトレーンのテナーを手にした演奏です。苦悩の叫びのテナーでのアドリブ・パートが長く、これは映画制作陣との打ち合わせからコルトレーンがイメージしたものかなと思いました。
そしてそのコルトレーンを支えるリズム陣の妖艶な演奏が、お見事です。充実期の黄金カルテットの演奏を堪能できる内容です。
【エピソード、映画の監督 ジル・グルー】
この黄金カルテットの演奏が使われた映画「Le chat dans le sac(袋の中の猫)」は、ジル・グルー(Gilles Groulx)が監督した作品である。Wikipediaには彼のページがあり、それも結構な量の文で彼を説明している。そこから引用して、監督 ジル・グルーについて紹介する。
1931年にケベック州モントリオールに生まれた彼は、14人兄弟の労働者階級の家庭で育った。学校でビジネスを勉強した後に就職したが、ホワイトカラーの環境が苛立たしいことに気付いた。彼は知識人になることを考え、映像の世界に進むことを決意し、8mmでの映画撮影を始めた。やがて彼の活動が評価され、政府機関カナダ国立映画制作庁(NFB)に雇用された。そのNFBでの活動として制作されたのが、この映画「Le chat dans le sac(袋の中の猫)」であった。
その後も彼はドキュメンタリーで活動を続け、高い評価を得ました。また映画の制作も「Le chat dans le sac(袋の中の猫)」以外に三本撮っており、特に1982年の作品は自動車事故を乗り越えての制作であった。
1994年に亡くなった。
【ついでにフォト】
2015年 みなとみらい
(2021年5月25日掲載)