Naima (Take 1) (John Coltrane)
(4分31秒)
【この曲、この演奏】
こ のコルトレーンの代表曲のスタジオ録音について、振り返ってみます。
1959年3月26日 アトランティック 6つのテイク(1つはFS)
Cedar Walton(p), Paul Chambers(b), Lex Humphries(d)
後年に編集盤で全てのテイクが世に出ています。
1959年5月5日 アトランティック 1つのテイクだが紛失
Tommy Flanagan(p), Paul Chambers(b), Art Taylor(d)
1959年12月2日 アトランティック 1つのテイクで本テイク
John Coltrane(ts), Wynton Kelly(p), Paul Chambers(b), Jimmy Cobb(d)
上記の三日間のレコーディングは、全てAlt 1311「Giant Steps」のためのレコーディングでした。コルトレーンのライブでの定番となっていく曲なのですが、スタジオ録音はこの三日間だけとの考えが、2019年にアルバム「Blue World」の発売で覆ったのでした。
先ずは書いておくべきことですが、1959年12月2日のネイマは、私を含め多くのジャズ・ファンにとって何度も何度も聴いてきたものです。これとの比較となれば、体に染み込んだ年数の圧倒的違いから、1959年12月2日のネイマ、アルバム「Giant Steps」のネイマが巨大な存在になってしまいます。
そのことを前提にここでの黄金カルテットのネイマですが、コルトレーンの語り口には、5年前の演奏との違いを出そうとの気持ちがあるように感じます。特にテーマで強く感じました。ただしこれは、1959年12月2日との比較だからなのでしょう。
コルトレーンの大きな飛躍による存在感、そして何よりもバンドとしての充実期での演奏、そこにこの曲の切なさと美しさがここにはあります。この1964年のネイマを何度も聴いていると、黄金カルテットでのネイマに出会えたことに、深い喜びを感じました。
【エピソード、本セッション】
この1964年6月24日のヴァンゲル・スタジオでの、黄金カルテットのセッションの知らせに接した時は、本当に驚いた。
インパルス!時代のコルトレーンの未発表の”発掘”は、今までに何度も遭遇してきた。近いところで言うならば、2018年に”発掘”された1963年3月6日のセッションで、これは「ザ・ロスト・アルバム」である。その前ならば2002年と2015年の2回に分けて”発掘”された、アーチー・シェップ入りでの「至上の愛」の「承認」、1964年12月10日のセッションである。
ただし、これらのインパルス!での”発掘”は、その存在自体は古くから知られていたことなのだ。例えばここで用いている資料で言うならば、最も古い1983年発行の資料09にその記述がある。もちろん、藤岡靖洋氏などの方々の調査により、何回の録音を重ねたのか、この曲も演奏したらしい、さらには「題不明」とされていたのはこの曲だ、と言うような事項が追加されてきた。しかしながら私の持っている資料での範囲内でも、1983年以前から周知の事実であるセッションの音源が、”発掘”されてきたのだ。
この2019年に発売されたアルバム「ブルー・ワールド」、黄金カルテットでの1964年6月24日のセッションは、1983年の資料09にも、1995年の資料06にも、そして2008年発売の資料07にも記載のないものであった。
私はアルバム「ブルー・ワールド」を国内盤で購入したので、アシュリー・カーン氏の解説の日本語訳、そして藤岡靖洋氏の解説から、本セッションに関する情報を得た。
1964年製作のフランス語映画「Le chat dans le sac(袋の中の猫)」のために、映画制作陣からの依頼で行われたセッションで、その録音は映画に使われた。つまり、インパルス!として行われたセッションではなかった。そして近年になり、ヴァーヴ/インパルス!が権利者から発売権を得て、2019年の発売になったとのことだ。
映画のことなどについては、次回以降に書いていく。
【ついでにフォト】
2015年 みなとみらい
(2021年5月23日掲載)