I Want to Talk About You
(Billy Eckstine) (9分45秒)
【この曲、この演奏】
コルトレーンが大切にしているこのスタンダードは、1961年と1962年の欧州ツアーでの演奏定番曲となっていましたが、1963年の欧州ツアーでもその初日のストックホルムで披露されました。
全編にわたって、テナー・サックスでのコルトレーンの一人舞台といった演奏です。メロディを大切に演奏し始めたコルトレーンは、この曲への深い想いとそれから思い浮かべることを演奏に込めているからこそ、この艶と重みのあるテナー・サックス演奏に繋がっているのでしょう。
3分45秒でエルヴィンが激しくなり、それに伴ってコルトレーンが少し様子を変える場面が30秒ほどあります。それから少し経ってから、今度はコルトレーンの独奏、まさしく一人舞台となります。想像力の塊が膨れ上がっていくこの独創は5分ほど続き、そのままエンディングとなります。
【エピソード、1963年のミシェル・デロームのインタヴュー記事 その3】
デローム
作曲の必要性を感じたのは、同じレパートリーを長く演奏してきたから?
コルトレーン
ああ、それは確かにある。
デローム
ただ曲を書いているわけではないと。
コルトレーン
そう、必要性に駆られて書いている。それに契約の問題もある。一年間に、最低三枚のアルバムを出さないといけないんだ。それにあちこち探しまわってみても、たとえそれが劇場であろうがコンサートであろうが、ティン・パン・アレー(訳注=音楽関係の会社が密集するマンハッタン二六丁目の俗称)あたりであっても、そういう曲にいつも巡り合えるとは限らない。個人の嗜好にぴったり合う曲なんてそうそう見つかるもんじゃないんだ。そういう曲はあまり多くない。たまにしか見つからない。だから一バンド抱える身としては、否応なしに、自分で曲を書かないといけないんだ。
「ジャズ・オット」誌、一九六三年一二月号(資料04より)
【ついでにフォト】
2014年 みなとみらい、横浜
(2022年11月16日掲載)