I Want To Talk About You
(B.Eckstine) (8分11秒)
【この曲、この演奏】
この有名スタンダードは、コルトレーンのライブでの重要曲であります。インパルス!での公式ライブ録音はこの年に、このバードランドの他に、7月7日のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルがありましたが、そちらでもこのスタンダードが演奏されていました。そちらでは8分強の演奏時間の中で、カデンツァで3分も演奏していたのが聴き所でした。この7月はドラムが代役のロイ・ヘインズ、それから3ヶ月後のこのバードランドではエルヴィンが戻っています。
「この美しいバラード・ナンバーの数あるヴァージョンの中でのベスト・プレイと言って間違いないのがこのヴァージョンである」(資料09)とのベタ褒めに対して、私も同意ですが、7月の演奏と甲乙付け難いものです。どちらもほぼ同じ演奏時間、そしてカデンツァも同じ三分の演奏となっています。こちらのカデンツァは全編コルトレーンのテナー・サックスだけであり、その内容は7月と同様に、メロディアスとスリルの交差を存分に聴けるものです。
演奏の前半、テーマからアドリブへとのコルトレーンなのですが、エルヴィンのドラムとの不器用な関係が垣間見える気がします。ただしここがまた聴かせる内容なのは、脱帽ものです。
1963年の二つの公式ライブ録音、ロイ・ヘインズでのニューポートとエルヴィンでのバードランド、私はこの曲の聴き比べが好きあり、私にとって贅沢な時間です。
【エピソード、バーバラ・ガードナーの記事 その13】
(ガードナーがコルトレーンにインタヴューしたのは1961年末頃)
すべからく実利的な理由から、コルトレーンは今の境地に到達した。誰も彼に、これ以上の拡張は望まない。自ら始めたことを極めた今、コルトレーンに尋ねた。彼は自分の運命の困惑に目を向けながら、こう答える。
「私はまだ見つけていないんだよ。いつも耳をそばだてているが、それはまだ見つかっていない」
それはどこにあるのか、それは何なのか、見つけたときに、どうしてそれだと分かるのか?
「自分でも何を探しているのか分からないんだ」と彼はあっけらかんと言った。「ただ、まだ誰もプレイしたことがない何かであることは確かだ。しかし、それが何なのかは分からない。手に入れたら直感で分かると思う。今もまだ探し続けている」
(資料04より)
【ついでにフォト】
2006年 香港
(2021年5月11日掲載)