The Inchworm (Frank Loesser)(8分31秒)
【この曲、この演奏】
1962年の欧州ツアーで何度も演奏されたこの曲が、ヘインズ入りの1963年6月のショウボートでも演奏されました。またこの曲の途中からマッコイが参加しています。
ここでの演奏は、ソプラノサックスのコルトレーンと、エルヴィンの代打ちで参加しているヘインズが、この曲を神がかりなものにしています。お伽話から始まって、それが予言書に変化していく様子が、演奏に詰まっています。
スタートはこのユーモラスなメロディをコルトレーンがリズムを強くして演奏し、すぐにアドリブを交えて、神秘的な世界へ進んでいきます。4分50秒あたりでは変化を加え、そして5分30秒でマッコイが加わってからは、混沌とした中での重量感あるウネリの演奏となっていきます。終了の30秒前にコルトレーンがテーマを吹いて、何とかエンディングとしました。
【エピソード、1963年5月 シカゴのマッキーズ出演について その2】
開演
やがて組み立てが完了し、ステージが始まった。店には続々と客が入ってくる。様々な人種が入り混じるその夜のマッキーズは、さながらミニチュア版国際連合と化していた。アメリカにはついに真の意味で人種のるつぼと化したのだ、そう、このスウィングの世界においても。
すでにトレーンは絶好調だ。客は全員うっとりと聴き入っているが、足を鳴らす者は一人もいない。できないのだ。
バーテンダーのジョンが身を乗り出して訊いてきた。「コルトレーンは好きかい?」
「昔は好きだった。マイルスと一緒にやっていた頃はね」と私は答えた。「今のコルトレーンは先に進みすぎてしまって、ちょっと奇抜すぎてついていけないな」
ジョン・コルトレーンの音楽を言葉で言い表すのは難しい。そのソロはシャープで快活で性格無比だ。彼のパッセージは嵐か台風の日の波のように押し寄せる。それでもその演奏を聴いていると、コルトレーンはもっとも先進的なジャズ愛好家の、少なくとも十年先を行っているという印象を抱かずにはいられない。
「シカゴ・デイリー・ディフェンダー」紙、一九六三年五月十六日版、16ページに掲載(資料04より)
【ついでにフォト】
2005年 香港
(2023年2月17日掲載)