19630307-54

Dedicated To You (S.Cahn - S.Chaplin)
                                (5分34秒)



【この曲、この演奏】

 ソール・チャップリンらの共作で、1937年にエラ・フィッツヘラルド&ミルス・ブラザーズ、アディ・カークがヒットを飛ばした曲で、ジョニー・ハートマン、ナット・キング・コール、シミー・スコットなど、男性ヴォーカルの渋い録音が多いです。(資料14)

 コルトレーンのこの曲の演奏記録は、本セッションだけです。ここでは5回目のテイクだけが最後まで演奏されており、そこに他のテイクから付け加えて、マスター・テイクとなりました。(資料07)

 さて内容ですが、ピアノだけをバックにハートマンの心一発の短めの歌の後に、リズム陣とのコルトレーンの原曲の美しく淋しいを大事にしたソロとなり、ハートマンが本格的に登場して夢心地の歌唱となっています。ハートマンとコルトレーン、どちらも暖かく歌心あふれる内容ですが、ここではコルトレーンが引き立て役かと思わせるハートマンの歌に軍配でしょう。



【エピソード、バーバラ・ガードナーの記事 その11】

 コルトレーンが既存のジャズの枠組みから脱却したのは、二人目のベーシストを招き入れた時だ。

 若き(ドナルド・)ギャレットによれば、コルトレーンはこのアイディアを何年も温めてきていたそうだ。ただ、そもそも彼がそれに興味を持つきっかけを作ったのが、ギャレットだった。

 「私たちは一九五五年以来の友人だが、彼が街にいるときはいつも私の家に遊びに来ていた。で、何時間もアイディアのことを話し合ったものさ」とギャレットは言う。

 「私は、自分がもう一人のベース奏者とプレイしているテープを持っていた。その中で私たちは何かリズム的なことをやっていて、コルトレーンはそのサウンドに飛びついた。東インドの水ドラムに近いサウンドだ。延々と低音を奏でる一本のベースが安定感を生み、脈動を与える。そこへもう一本のベースが自由にインプロヴァイズするんだ。コルトレーンはそのアイディアが気に入ったようだった」

(資料04より)



【ついでにフォト】

tp09022-162

2009年 みなとみらい ラ・マシンによるラ・プランセス

(2021年4月23日掲載)