19630307-22

Lush Life (B.Strayhorn)  (5分29秒)



【この曲、この演奏】

 ビリー・ストレイホーン作のバラードの名曲です。コルトレーンのこの曲の演奏記録ですが、何と言ってもプレスティッジ時代の1958年1月10日にドナルド・バード入りのクインテットでのセッションが有名なところです。もちろん良い演奏だからですが、その演奏が1961年にアルバム「ラッシュ・ライフ」として世に出たからです。この1958年の演奏と、この1963年のハートマンとの演奏が、この曲の二大名演奏と言えます。

 さて資料07を見ますと、このセッションでこの曲を12回演奏し、最後までの演奏となったのは2回あります。その中の2回目のテイク9に他のテイクから加えて、更には後からハートマンの歌にコルトレーンがオブリガートを加えて、マスターとしたとのことです。そして1980年代の最初CDでは、その後付けオブリガートがないものをあるとのことですが、その辺りは後日調査してみます。

 さて内容ですが、ハートマンの歌声の響きにうっとりしながらバラッドの名曲を心から楽しめるものです。ピアノとハートマンの歌の重なりが主となっております。コルトレーンのソロはこの曲を大事に扱ったもので、ハートマンの柔な世界に少し刺激を与えているかのものです。

 ハートマンの歌のバックに響くテナーが後付けなのですが、そんなことは気にせずに聴けるものです。



【エピソード、制作過程など その1】

 資料13より、興味深い話を引用する。

 自身「ジャンルを選ばない歌手」と言い、ジャズ・シンガーと決めつけられるのを好まない、「おれはクラシックもやっていたし、昔の本格的な聖歌も歌うんだ」と言うハートマンは、自分のキャリアを立て直すため日本へのツアーに出た。そこで電話が入り、あるプロデューサーから企画が持ち込まれた。「おれはコルトレーンのファンで、一度もあったことはなかったけれど、レコードはずっと聴いていた。ボブ・シールは、おれにコルトレーンにぴったりの歌手じゃないって言ったんだ」

 しかしシールはこだわった。「ヴォーカルのアイディアを出したのはおれだけど、あんたを選んだのは彼なんだ」シールは後日こう説明している。この「彼」は当然コルトレーンのことだ。所属期間は重なっていないものの、2人ともガレスピーのビッグバンドにいたことがある(ハートマンは1948年から翌年にかけて、コルトレーンはその直後に入った)。どこでどうやって聴いたかはともかく、ハートマンの声はコルトレーンの印象に残っていた。「ジョニー・ハートマンの声はおれの心に焼き付いていた・・・・・あの響きが好きなんだ」この歌手の落ち着いて気取らないバリトンについて、コルトレーンはそう振り返る。「それで彼に声をかけて、一緒にアルバムを作ったんだ」



【ついでにフォト】

tp09019-108

2009年 みなとみらい ラ・マシンによるラ・プランセス

(2021年4月20日掲載)