One Up, One Down (take5)
(John Coltrane) (7分13秒)
【この曲、この演奏】
高速連写のコルトレーンのこの曲ですが、1回目のテイクが完走したのに対し、その後に3回のダメがあり、ここに5回目の演奏となりました。
なおこの曲ですが、前月の2月23日のバードランドでのライブで演奏されており、海賊盤でその演奏を確認できます。
さて演奏ですが、テイク1と同じ構成で演奏は進みますが、コルトレーンのテナーに荒っぽさが目立ち、それはそれで聴いて楽しめるものですが、演奏側としてはこの日のセッションではこの曲についてもっと良くなる気配を感じなかったのでしょう。
【エピソード、バーバラ・ガードナーの記事 その8】
コルトレーンの長尺の演奏、不断の挑戦、そしてミスに対しては、彼の音楽に心酔していたファンも非難を浴びせた。ミュージシャンたちは時に、彼のチャレンジ精神への羨望を忍ばせつつも、批判を展開した。
アダレイは彼の長いソロに対して、マイルス・デイヴィスがコルトレーンによく質問していたことを思い出す。
「折に触れてマイルスが、なんでそんなに長く演奏するんだ? と訊いた。コルトレーンは、全部やろうとするとそれだけ長くなるんだよ、と答え、マイルスはそれを受け入れた。本当だよ。マイルスが他人のプレイや流儀について口うるさく言うことはまずなかった」
当初はジャズ界の大半が笑っていた。この男が本気のはずがない・・・・・それが誠実な作品づくりで名を馳せてきたジャズマンに対する態度だった。コルトレーンが新たに設定した航路から逸れることは決してなかった。
「彼は何においても真剣だった・・・・・プレイに関するすべてのことに」とアダレイは言う。「マイルスはたまにユーモラスなプレイをしたりした。彼との演奏ではふっと肩の力が抜ける瞬間が多々あったが、ジョンはどこまでも誠実な音楽であったよ。
セカンド・ベーシストとしてコルトレーンと何度か仕事をしたシカゴ在住のミュージシャン、ドナルド・ギャレットは言う。
「彼は入念なミュージシャンだ。ときには一曲を七、八通りのやり方で演奏してから、最終的なスタイルを決定することもあった」
コルトレーンの妻ファニータ(ネイーマのクリスチャン名)は、実験の段階で、コルトレーンが時に食事も睡眠もとらずに二四時間ぶっ続けで演奏していたことを覚えている。体力的に限界が来るまで吹き続け、そして体が疲れて演奏できなくなると、今度は音楽のことを延々としゃべりだすのだ。
(資料04より)
【ついでにフォト】
2005年 香港島 トラム
(2021年4月17日掲載)