19621119-13

Mr. P.C. (John Coltrane)  (17分45秒)



【この曲、この演奏】

 1962年欧州ツアーの定番演奏曲であるこの曲は、この日の前半の部では3曲目に演奏していましたが、後半の部では6曲目の演奏となりました。

 コルトレーンがテナーでテーマを23秒吹いてと、ここまでは前半の部と同じです。その後にマッコイのピアノ・ソロとなったのが前半の部ですが、後半の部ではコルトレーンがそのままソロとなりました。その内容は、重戦車が走行する大地の振動を感じさせるものであり、それが気がつくとジープで荒地を疾走するような演奏へとなっていきます。

 コルトレーンのソロ開始から7分50秒ほどでコルトレーンとエルヴィンの掛け合いとなり、そのままエルヴィンのソロとなります。前半の部より倍ほど長い5分20秒を、緊張感ある演奏となっています。このコルトレーンからエルヴィンへと続く展開は、この日の名場面の一つと言えるのでしょう。

 演奏はさらにコルトレーンが4分弱吹き、終わっていきます。

 コルトレーンはこのバンドの可能性を、前半の部が終わってから、熟考したのでしょう。私が思うところでは、マッコイを外したのではなく、エルヴィンの存在にかけるものが、コルトレーンにあったのでしょう。



【エピソード、J. クルーゼとM.デロームとのインタヴュー、その12】

質問者
 あなたは以前、いつの日か、ソプラノとテナーのどちらをプレイするか決断を迫られるだろう、と言っていました。結論は出ましたか?


コルトレーン
 その問題は今なお未解決だ。ソプラノを吹くためには、唇を独特のやり方でホールドしないといけない。テナーよりも筋肉を使うから、すぐに唇が痛くなる。あまり”タイト”にプレイする癖がついてしまうと、私のアンブシュアはタイトすぎて、テナーを吹けなくなってしまうかもしれない。実は、すでにそうなりつつあるんだ。ソプラノを二年間プレイしてきて、最初の兆候が出始めている。それはこうしたアンブシュアの問題だったりするわけだが、それ一つだけ取ってみても、将来的にプレイする楽器の選択を強いられることは避けられない。ソプラノはテナーのアンブシュアを失ってもお釣りがくるほど魅力的な楽器だが、それでも、最終的に私がテナーを選ぶことだってあり得る。本当だよ。現時点ではどうなるか断言できないな。


 1962年11月17日のジャン・クルーゼとミシェル・デロームによるコルトレーンへのインタヴュー。ジャズの手帳誌、一九六三年第八号。(資料04)



【ついでにフォト】

tp07014-004

2007年 ロッテルダム、オランダ 


(2022年9月19日掲載)