19621113-10.11

I Wish I Knew (H.Warner - M.Gordon)
(4分50秒)



【この曲、この演奏】

 1945年のミュージカル「ダイアモンド・ホースシュー」の挿入歌で、劇中では主演のディック・ヘイムスが歌った。(資料14)

 この曲のコルトレーンの演奏記録は、本セッションだけです。

 資料07によれば、このセッションでこの曲を4回録音に臨みましたが、2回はフォルス・スタートでした。そして「バラッズ」A(S)-32 には、3回目と4回目のテイクを繋げて収録されました。

 4分54秒演奏されたテイク3から4分22秒まで採用し、テイク4の最後の28秒を繋げたとのことです。(資料07)

 この曲について資料09では、「とりたてて言うほどとりえのある曲ではないが、コルトレーンが取り上げると洗練された曲風になる」とあります。前半はそこまで言うかなと思いますが、後半にはうなずけるものがあります。コルトレーンのテナーサックスの甘く優美な響き、そしてここでは何よりもマッコイのピアノが、光り輝く演奏を繰り広げています。



【エピソード、マウスピース不調説は真なり? その5 インタビューから評論家について 前半】

 先に紹介した1966年4月18日にフランク・コフスキーによって行われたインタヴュー、世に中にマウスピース不調説が出回るきっかけとなったインタヴューでの、評論家に関する部分を引用する。
(資料04より)


コフスキー
 (1961年のドルフィーとの共演期の話から)そして当時のあなたは、批評家の剥き出しの敵意にさらされていた。よく覚えていると思いますが。


コルトレーン
 ああ。ありとあらゆる批判が、いっせいに襲いかかってきた。それはもうすごかったな。私にはあらん限りの力が必要だった。おそらくこういう批判のせいで、このマウスピースじゃ出したい音がさせない、と感じるに至ったのかもしれない。


コフスキー
 批判のせいで、若干、自信喪失気味だったと?


コルトレーン
 ああ、その印象はある。


コフスキー
 新しい音楽に対して、こうした批判が起きるのはなぜでしょう。特にあなたの場合は?


コルトレーン
 さあ、私にはさっぱりわからないな。敢えて答えようとも思わない。なぜなら、当時、私は彼らにこう言ったんだ、君たちはまるで分かっていない、って(笑)。


コフスキー
 あなたは、批評家たちが・・・。


コルトレーン
 私は、彼らは何も分かっていないと感じた。それだけだ。


コフスキー
 彼らは誠実かつ徹底的に、あなたの音楽を理解しようとしたと思いますか?


コルトレーン
 当時はそう思わなかった。だから私は提案したんだ。「ダウンビート」の記事でこう問いかけた。「もし私の音楽を理解したいと思っている方がいたら、集まって一緒に語り合いましょう」と。彼らが真剣に興味があって、何かを知りたいと思っていたら、自分にわからないことを非難するのではなく、話し合い、語り合おうではありませんかとね。ただ、結局一人も名乗り出なかった。だから私が何を言わんとしているか、彼らは本気で理解する気がなかったんだよ(笑)。


コフスキー
 怖気づいたんでしょうね。


コルトレーン
 かもしれない。

(続く)



【ついでにフォト】

tp09070-078

2009年 ペナン島

(2021年3月22日掲載)