My Little Brown Book (B.Strayhorn)
(5分24秒)
【この曲、この演奏】
ビリー・ストレイホーン作の哀愁感漂うバラード(資料09)のこの曲、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。ここでの演奏は、エリントン楽団のベーシストとドラマーが担当しています。
その演奏ですが、エリントンのピアノが、「ジョン、さぁ、決めてくれ」とそっと囁くようなピアノで始まります。そしてコルトレーンは、倦怠感とあやしさの混じる吐息で、このバラッドを演奏しております。
この曲が大方のジャズ好きの耳に残っているのは、もちろんエリントンとの他に、このコルトレーンの演奏も大きな要因でしょう。ここでの演奏で、みんなの心に残るバラッドになった曲です。
【エピソード、シールの狙い】
これ(エリントン&コルトレーン)はその年(1962年)の最高のアルバムだった。この豪華な顔合わせはすべての面において大成功。これもシールの発案だったのである。シールは、日頃コルトレーンが、自分の演奏に対して厳しい批判的態度を取り過ぎるのを心配し、なんとかならないものかと考えていた。コルトレーンの、完全主義と不安感の逆説的バランスが彼を、リテイクにリテイクを重ねる悪習に追いやっていたのであろう。これレコーディングに手間がかかっては、時間はもちろんのこと経済的にもソロバンに合わなくなってしまう。そこで、天才とプラグマティストがうまく同居しているエリントンなら、コルトレーンに良いお手本を見せてくれるだろう、とシールは考えたのである。音楽的にもお互い触発し合って、創造の場が豊かになるだろうという読みも合った。そして結果は、ビューティフルそのものだった。
(資料01より)
【ついでにフォト】
2013年 みなとみらい
(2021年3月16日掲載)