Stevie (Duke Ellington) (4分25秒)
【この曲、この演奏】
この曲は、エリントンが甥にあたるドラマー、ステファン・ジェイムスに捧げたブルース・ナンバーです。(資料09)
コルトレーンのこの曲の演奏記録は、本セッションだけです。
ここではベースがアーロン・ベル、ドラムがサム・ウッドヤードであります。
さて演奏ですが、ミドル・テンポのブルースの中でエリントンは、気軽なタッチながら躍動の演奏を行っています。コルトレーンにとっては得意分野の曲なのですが、御大の前での緊張感がソロに出ているかなと、私は感じました。ここの辺りは、聴き手によって異なる感想でしょう。
歴史的なセッションが、この演奏で始まったのでした。
【エピソード、本セッション】
このA(S)-30「Duke Ellington & John Coltrane」のためのセッションは、プロデューサーのボブ・シールの大きな計画の一環であった。このアルバムのライナーノーツに冒頭に、次の一文がある。
ジャズ界において、スタイル面でもっとも強い影響を与えてきた三人は、ルイ・アームストロング、コールマン・ホーキンス、そしてジョン・コルトレーンだ。音楽プロデューサーのボブ・シールは、この並び順どおりに彼らとデューク・エリントンとの共演を実現させていく中で、デュークがこの世界でいかに重要な立場にいるかということを実証してみせた。(訳は資料04から)
ボブ・シールはルーレット時代の1961年にエリントンとサッチモの共演を実現させ、「Together For The First Time」と「The Great Reunion」との二枚のアルバムで世に出した。そしてホーキンスとの共演は1962年8月にこのインパルス!で実現させ、1963年に「Duke Ellington Meets Coleman Hawkins」とのアルバムで世に出した。そして最後に、このエリントンとコルトレーンの共演を実現させ、1963年に世に出したのである。
このセッションには、エリントンとコルトレーンがそれぞれのバンドから、ベース奏者とドラム奏者を連れてきた。エリントンのオーケストラからは、アーロン・ベルとサム・ウッドヤードであった。曲によりそれぞれを使い分けているが、1曲(In A Sentimental Mood)だけアーロン・ベルとエルヴィン・ジョーンズの組み合わせとなっている。
資料07に興味深い情報がある。このセッションの7曲には、「11114」から「11120」とのマトリック・ナンバーが付けられている。そしてインパルス!の親会社のABCパラマウントのセッション・ログ・リストには「11121」があり、「Not Used」と書かれているとのことだ。これは、「番号は準備したけど使わなかった」なのか、「この録音は使いません」とのことなのだろうか。未発表が多いインパルス!なので、何か起きることを楽しみにしたい。
【ついでにフォト】
2013年 みなとみらい
(2021年3月12日掲載)