19620620-04,07,08,11

Tunji (John Coltrane)



【この曲、この演奏】

 この曲は副題を「Toon Gee」ともいい、ナイジェリア生まれのドラマー、オラ・トゥンジに捧げたコルトレーンのオリジナルである。いかにもアフロ・スピリチュアルを感じさせる曲風のモード作品である(資料09)

 この曲をこの日に13回演奏しており、演奏しきっているテイクは4つあります。しかしどれもA(S)-21「Coltrane」には採用されず、長らくその存在が不明でありました。しかし2002年に発売されたVerve/Impulse! 314 589 567-2 で世に出ました。


-04   Tunji(10分41秒)
 ベースの短いソロから始まり、コルトレーンのテナーサックスでテーマ、そしてアドリブを交えていきます。続くのはピアノのソロ、そして今度は長めのベースのソロ、その後に全員で簡単にテーマで終わります。

 最初の演奏で手探り状態、そして散漫、唐突な終わり方、この曲が持っている「いかにもアフロ・スピリチュアルを感じさせる曲風」を活かせなかった演奏です。

 なおこのテイクには当初「One, Two, Three」とのワークング・タイトルがついていました。


-07   Tunji(7分55秒)
 ブレイクダウンで終わった2つのテイクを挟んで、この曲の4回目のテイクです。

 ベース、そしてピアノとドラムスが入り、コルトレーンがテーマを吹き始めます。そのままコルトレーンのアドリブとなり、それにピアノのソロが続きます。その後に力強くリズムを決めるベースのソロとなり、後テーマで終了です。カルテットでのこの曲の演奏の方向性が、見えてきたにかなとの内容です。


-08   Tunji(7分16秒)
 構成は前テイクと同じです。ギャリソンのベース・ソロに彼の意気込みを感じますが、コルトレーンは空回りの感ありで、没テイクとなりました。


-11   Tunji(7分47秒)
 「Impressions」の演奏、そしてこの曲のフォルススタートとなったテイクを挟んで、7回目のテイクです。構成は同じままであり、華がない演奏で終わりました。


 この後に再び「Impressions」の演奏をし、そしてこの曲の演奏に戻りますが、7回のテイクを重ねましたが、結局は没となりました。結局この日にこの「Tunji」を13回演奏しましたが、満足の結果とはなりませんでした。


 なお6月29日のセッションで演奏された「Tunji」が、A(S)-21「Coltrane」に収録されました。



【エピソード、ヴィレッジ・ヴァンガードのウエイターの回想】

 ぼくは1960年代の初期に、ヴィレッジ・ヴァンガードでウエイターをやっていました。ぼくにとってコルトレーンはバッハでした。この二人がぼくの理想だ。トレーンのすばらしいところは、彼が実に人間らしい人間だったことです。たとえ言葉を交わさなくても、ステージの彼とぼくの間に通い合うものがありました。たまに話す機会がありましたが、そんな時ぼくは彼の誠実さがよく分かりました。決していい加減なことは言わない人でした。今でもぼくにわからないことは、どうして彼のようにマジメな人が、この鉄火場のようなミュージシャンの世界に住んでいられたのか、ということです。コルトレーンがあんなにも長く、ミュージシャンの世界を生き抜き、しかも全く自分を失うことがなかったことは、ただただ奇跡だと僕は思います。  バート・ブリットン  (資料01より)



【ついでにフォト】

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2010年 マレーシア ペナン島でのタイプーサム

(2021年2月24日掲載)