19620411-07

Big Nick (John Coltrane)  (4分5秒)



【この曲、この演奏】

 コルトレーンと親交のあったテナー・サックス奏者のビッグ・ニック・ニコラスに捧げた、コルトレーンのオリジナル曲です。(資料09)

 このビッグ・ニック・ニコラスは1922年生まれの方で、1939年からプロ活動を開始しており、1948年にはガレスピーのところで演奏するようになり、その頃の演奏がコルトレーンに影響を与えたとのことです。そして彼は1980年代に入り突如インディア・ナビゲーションから2枚の作品を発表し、ファンを驚かせました。そのうちの1枚は「ビッグ・ニック」で、コルトレーン作のこの曲を取り上げています。

 さてここでの演奏ですが、A(S)99との規格番号で「Definitive Jazz Scene, Volume 1」というアルバムで1964年に世に出ました。これは何人ものミュージシャンの曲を収録したオムニバスであり、購入者は限られており、当時のコルトレーン・ファンでも聴かなかった方が多いことでしょう。(右欄には1985年に発売されたコルトレーン名義のアルバムを載せた)

 しかしながら曲は、コルトレーン・ファンのみならず多くのジャズ・ファンが耳している曲なのです。この年の9月26日に行われたエリントンとコルトレーンの共演でこの曲が演奏され、A(S)30との規格番号で1963年に世に出て、ヒット作品となったからです。 

 さて演奏ですが、コルトレーンのソプラノ・サックスの響きが一段と大きく艶やかになっております。これを楽しむだけでも、存在価値ありでしょう。

 ビッグ・ニック・ニコラスは穏やかで優しい方だったのが分かるこの曲を、コルトレーンはその通りの演奏でテーマを吹いています。続くマッコイのソロは、さて場面が変わりますよ、との様相です。そしてコルトレーンのソロ、既にこのバンドへの信頼感ある中で、締まった空気感の演奏です。ベースを挟んで、再び穏やかなテーマに戻り、演奏は終了します。

 インチワームと似た曲調と演奏スタイルだなと、私は感じました。

 さて余談ですが資料07によれば、ここでの演奏は、2002年にヴァーヴ参加のインパルス!から発売された「Coltrane(Deluxe Edition)」に収録されたのですが、初回プレスの2000から3000セットには、何と9月のエリントンとのこの曲の演奏が収録されてしまったのです。



【エピソード、オークションでコルトレーンのテープ】

 2005年2月20日に行われたNYのガンジーズのジャズ・オークションに、ネイマ家が所有していたコルトレーンの35巻のリール・テープが出品される予定だった。しかしながらオークション前にこの出品は、ヴァーヴ(インパルス!権利の所有者)からの主張で撤回された。この出品予定テープの多くは1961年から1964年にかけてのインパルス!での正式録音の複製だ、というのがヴァーヴの主張だった。

 研究家のバリー・カーンフェルド(Barry Kernfeld)は、このテープを調査していた。ガンジーズからの依頼で、オークション・カタログを作成するためであった。その調査結果は出品中止でオークションのカタログには掲載されなかったが、カーンフェルド氏が別の雑誌にこれを発表しことにより、誰でも知り得る情報となった。(資料07)

 例えばこの日のセッションであるが、「Soul Eyes」が演奏されながら未発表であることは、以前から知られていた。資料06、資料08、そして資料09にも、その記述がある。しかし「The Inchworm」の別テイクについては、2008年発行の資料07にその情報があるだけであり、それは上述のカーンフェルド氏の調査によるものだ。



【ついでにフォト】

tp13008-044

2013年 ペナン島

(2021年2月18日掲載)