Impressions (John Coltrane) (14分52秒)
【この曲、この演奏】
三日連続で演奏された「インプレッションズ」ですが、その演奏内容は常に変化しています。それはドルフィーの立ち位置なのですが、初日はテーマ、ソロ、後テーマ共にドルフィーのアルトが聴けます。二日目はテーマではドルフィーが加わっていませんでした。そしてこの三日目のドルフィーは、演奏の最後の最後に少しだけコルトレーンのテナーに音を重ねるだけです。
John Coltrane(ts)
Eric Dolphy(as)
McCoy Tyner(p)
Jimmy Garrison(b)
Elvin Jones(d)
演奏メンバーはこの通りで三日間同じですが、実質はカルテットでの演奏、コルトレーンのワン・ホーンでの演奏です。
さて演奏ですが、コルトレーンのテナーでのソロは13分半と書いても、意味のないことでしょう。テーマからソロから後テーマまで、つまりは15分弱の演奏時間の全てをコルトレーンは吹きまくってます。またソロに入って2分を過ぎたあたりから、マッコイのピアノはオフになり、後テーマに入るまでそれが続きます。つまりは実質トリオの演奏と言えるでしょう。そこにはこのライブ・レコーディングに、このバンドに、そして自分が追求する音楽へのコルトレーンの執念を感じさせる演奏です。またエルヴィンとギャリソンの存在感、その演奏の緊張感にも殺気を感じるほどのものです。二日目の「チェイシン・トレーン」と同様に、このメンバーでの演奏に煌きをコルトレーンは感じたことでしょう。
この演奏は1963年に世に出ました。
【エピソード、ボブ・シール その8】
インパルス!に迎えられたボブ・シールは、早速コルトレーンの初ライブ・レコーディングに取り組んだ。シールがコルトレーンについての発言が、資料13にある。
レコード会社のお偉方と初めて会ったとき大抵のミュージシャンがそうするように、コルトレーンもおれを警戒の目で見た。まるで吊るしの服を買うかどうするか迷って、慎重に試着しているみたいに。
音楽が進むにつれ、彼はだんだんとその状況にも演奏にも満足していった。
コルトレーンは優しく人懐こいところがあって、それが表に出てきたので、おれたちは仲良くなったんだ。
これは生涯忘れられない。コルトレーンがこう言ったんだ。「あんたはスウィング世代だ。・・・だからいつでもこんなふうにやる(指を鳴らしてビートを刻む)。こうやってテンポを取る」。さらにこう言った。「おれたちのやり方だと、テンポは前後に揺れなきゃいけないんだ。だから譜面の上にある小節の区切りは素通りする。・・・こんな感じだよ。1、2、3、4・・・1、2、3、4・・・1、2、3、4・・・」
【ついでにフォト】
2010年、マレーシア ペナンでのタイプーサム
(2021年1月28日掲載)