19611101-05

Spiritual (John Coltrane)   (12分49秒)



【この曲、この演奏】

 「スピリチュアルという曲名にふさわしい、素朴な祈りの姿を連想させるようなルバートのテーマで始まるオリジナル曲」(資料09)とのこの曲のコルトレーンの初演は、資料07によれば1960年10月にあるようです。しかしながらコルトレーンのこの曲は、やはりこのヴィレッジ・ヴァンガード四日間での演奏に尽きることでしょう。この月の欧州楽旅でも1回の演奏が確認できており、また黄金カルテットだけでの1963年10月のライブでも、この曲を披露しております。

 ヴィレッジ・ヴァンガード四日間全てで演奏されたこの曲の、この初日でのメンバーは次の通りです。

John Coltrane(ss)
Eric Dolphy(bcl)
McCoy Tyner(p)
Reggie Workman(b)
Elvin Jones(d)

 この日はコルトレーン、ソプラノ一本でこの曲を演奏しています。

 さて演奏ですが、テーマはコルトレーンのソプラノが主役で始まり、それは瞑想の中を彷徨うなもので、バックに響くドルフィーのバスクラも良い効果となっています。

 続くのはコルトレーンのソロで3分弱のものです。瞑想から心の中のもがきや叫びを表現しているような、ソプラノの響きです。

 そしてドルフィーの3分弱のソロとなりますが、それまでの3曲と違い静かな入り方となっています。でもやがてコルトレーンの叫びが乗り移ったようなバスクラとなっていきます。

 さらに続くのはピアノ・ソロ、マッコイの2分間です。コルトレーン・バンドでのマッコイの輝きを聴ける内容です。

 そして演奏は再びコルトレーンのソロでの2分弱、その後に短いベースとドラムの響きとなり、後テーマとなります。

 この演奏は、1977年に世に出ました。



【エピソード、ライヴ録音に至った理由】

 資料13 には、ボブ・シールの言葉がある。
 まだ就任して1週間も経っていなかったんだけれど、ヴィレッジ・ヴァンガードでコルトレーンのライヴを録ろうと決めたんだ。・・・思い出すよ、最初の晩はとんでもなく緊張していたな。わけがわからなかった。でも、じっと集中してその場にいたら、その音楽がわかるようになってきたんだ。


 資料05には次のようにある。
 「コルトレーンの真価はライヴにあり!」と見抜いたシールは、一九六一年一〇月二四日から一一月五日までの二週間、ヴィレッジ・ヴァンガードに出演するコルトレーンに照準を合わせ、ライヴ・レコーディングを敢行した。


 資料07には、次の記述がある。
 コルトレーンとシールの最初の仕事が、ヴィレッジ・ヴァンガードでのレコーディングである。当初は一夜だけのレコーディング予定であった。しかし結局、四日間のレコーディングを行うようになった。



【ついでにフォト】

tp08053-065

2008年、みなとみらい

(2021年1月15日掲載)