19610525-14

Original Untitled Ballad (To Her Ladyship)  
(Billy Frazier)   
(8分58秒)



【この曲、この演奏】

 曲名について資料07には、「LP発売されるまで正しい曲名が分からなく、Original Untitled Balladとしていた」とあります。ただしこの記述では何故に「Original」としたのかが、わかりません。とにかく、この曲のコルトレーンの演奏記録は、本セッションだけです。

 さて演奏ですが、コルトレーンはソプラノとテナー・サックスを使っています。哀しさ溢れるこのバラッドのテーマ、先ずはドルフィーのフルート、次にコルトレーンのソプラノ、そしてハバードのトランペットと引き継がれ演奏されています。1分43秒からコルトレーンのソプラノが再び登場しまだテーマの続きかと思わせますが、ソロへとの突入です。そのソロは、トランペット、フルート、ピアノへと続きます。そして後テーマですがここでもフルートが先陣を切り、コルトレーンのテナー、そしてトランペットへ続き、そして三管の重なりで演奏の終了を迎えます。

 ドルフィーとハバードは純粋にこのバラッドに心捧げての演奏ですが、コルトレーンにはソプラノでのバラッド演奏への模索のようなものが感じられます。

 資料07に、「1分43秒でサキソフォンの音がやかましくなる(squawk)」とあり、これは「it was not originally issued」だからとあります。これは意識して聴けば、なるほどと感じる程度のものです。



【エピソード、レジー・ワークマン】

 正確にはこの二日前のインパルスのセッションからだが、レコーディングにレジー・ワークマンが参加している。資料01にあるワークマンに関する記述を引用する。

 ジョン・コルトレーンは、パーソナルとプロフェッショナルの両方の理由で、他のミュージシャンの演奏にいつも関心を持っていた。一九六〇年の終わり頃、コルトレーンは、いまはなくなったヴィレッジのあるクラブで、ベースのレジー・ワークマンとドラムスのロイ・ヘインズをもっぱら聴いていた。彼はヘインズがバードのところにいた時によく聴いたことがあったし、ワークマンのことはフィラデルフィア時代から知っていた。スティーヴ・デイヴィスの回想によれば「レジーは実にうまくなっていた。彼はぼくより力強くなりつつあり、そのうえ攻めの演奏ができた。いろんな人がジョンに、ぼくのベースが聴こえないと告げ口しているのは知っていた。それがジョンの決断にどれほど影響を与えたか、ぼくにはわからない」

 だが、デイヴィスにもはっきりわかる日がくる。翌年のはじめ頃、四重奏団がクエーカー・シティでした最後の夜、ジョンはデイヴィスの肩を抱くようにしながらこう言った。「スティーヴ、ちょっと気分を変えてみたいんだ。そこで、君にどうしても承知してもらいたいことがある。どうしてもだ」

 こうして、スティーヴ・デイヴィスは去った。

 そしてレジー・ワークマンが入団した。



【ついでにフォト】

tp12008-076

2012年、ペナン、マレーシア

(2020年11月27日掲載)