19610525-13

Aisha (McCoy Tyner)   (7分38秒)



【この曲、この演奏】

 マッコイ・タイナー作のこの美しいバラッド、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。作者のマッコイは、1978年の田園コロシアムでのライブ・アンダー・ザ・スカイにロン・カーターとトニー・ウィリアムスとのトリオで出演した際にもこの曲を演奏し、それはマイルストーンから発売されました。(資料08)

 この演奏について資料09では「静謐の美」と難しい漢字を用いて表現していますが、まさにその通りの演奏です。テナー・サックスのコルトレーンがテーマを奏で、そのままテナーでのソロに入ります。ハバードのトランペットとドルフィーのアルトが後に続き、ソロの最後はマッコイのピアノとなり、テナーのコルトレーンが後テーマを演奏して終わる構成です。ハバードもドルフィーも存在感を示していますが、やはりコルトレーンとマッコイが光っている演奏であり、この「静謐の美」はインパルスでも何度か耳にするものです。

 エルヴィンのブラシ、そしてベースはワークマン一本、こちらも渋い存在感でありました。

 なおこの曲は計8回演奏されており、内5回はフォルス・スタートや完走できずに終わっています。問題は完走した最後の3テイクなのですが、資料07によれば、どれが本テイクに選ばれているのか、不明な点があるようです。果たして真意はいかに、なのですが、本テイク以外は紛失していますので、確認のしようがないままです。



【エピソード、変名】

 契約の関係上、別名でアルバムにクレジットされることは、音楽界では散見されることだ。本セッションの演奏が1373(Ole)としてアトランティックから発売された際には、George Lane とのドルフィーはクレジットされていました。この時期、ドルフィーはプレスティッジと契約していたからです。「Dolphy - cannot use name - use alias」と本セッションのファイルに書かれている。

 プレスティッジと契約しているジャズマンが他レーベルにサイドマンで実名参加するケースは数多ありますが、何故にドルフィーはダメだったのか、その点は各資料をながめても答えはない。

 なおブルーノートと契約しているハバードについては1373(Ole)では、「by arrangement with Blue Note Records」として、実名表記されている。(資料07より)



【ついでにフォト】

tp12007-103

2012年、ペナン、マレーシア

(2020年10月31日掲載)