Ole (John Coltrane) (18分15秒)
【この曲、この演奏】
コルトレーン作のこの曲の演奏記録ですが、1995年発刊の資料06ではこのセッションだけとなっていましたが、それから13年後に発刊された改訂版では、このセッションから二ヶ月後にライブで取り上げられていたことが追加されました。それはベースがレジー・ワークマンになってのカルテットに,、アート・デイヴィスのベースが加わってのものです。私家録音が残っているようですが、残念ながら世には出ておりません。
さて本セッションでのこの曲ですが、こちらでもベースはワークマンにデイヴィスとなっており、コルトレーンはソプラノ・サックス、そしてドルフィーはフルートを吹いております。
その演奏ですが、コルトレーンがスペインの民族音楽に触発して作ったこの曲に対して、先ずはテーマにおいてコルトレーンがソプラノでメンバーに魔法をかけるかのように演奏しています。ソロは、フルート - トランペット - ピアノ - ベース2本と続いていきますが、コルトレーンの魔法にかかったかのような展開です。ソロはコルトレーンのソプラノへと続きそのまま後テーマとなるのですが、コルトレーンに他のメンバーの魔法が加わったような、妖しさの世界の表現となっています。
コルトレーンがソプラノ・サックスの可能性を更に深めたとの同時に、全体をサポートするマッコイとエルヴィンの姿が何とも言えぬ仕上がりになっています。
コルトレーンの出番はさほど多くないのに全体がコルトレーンに支配されている、そんな内容です。
この曲はこのセッシィンで計4回演奏されました。最初がこの本テイクなのですが、資料07にアトランティックのセッション・ファイルが記載されており、そこにはこの本テイクに対して「very good first take, but long」と書かれております。そこでその後に3回演奏されたのですが、結局は最初のテイクを超える演奏はなかったようです。
なお録音最中ではこの曲は、「Venga Vallejo」との仮題がついていたと、同じく資料07にあります。
【エピソード、このセッション】
このセッションが、コルトレーンのアトランティックにおける最後のセッションである。二年間強で12回のセッションを行い、名盤を産んできたが、実験的、或いは試験的な作品も産まれてきた。
このセッションの後にコルトレーンのインパルスでのレコーディングが始まる、となるところなのだが、実際にはこの二日前にインパルスでの最初のレコーディングを行なっていた。それは「アフリカ・ブラス」のセッションで、5月23日と6月7日の二回に分けて行われた。
【ついでにフォト】
2011年、ペナン、マレーシア
(2020年10月29日掲載)