19610523-30(36)

Africa (John Coltrane)  (14分9秒)



【この曲、この演奏】

 アフリカ/ブラスの二日間のセッションで、コルトレーン作の「アフリカ」は何度も演奏され、最終的には3つのテイクが世に出ました。コルトレーンのこの曲の演奏は、このアフリカ/ブラスのセッションだけと思われていましたが、2008年発刊の資料07には、資料06にはないこの曲の演奏について、興味深い記述があります。1963年11月3日に西ドイツ・ミュンヘンのドイツ博物館内で催しがあり、欧州楽旅中の黄金カルテットがそこに出演し、この「アフリカ」を演奏したとのことです。しかしながら資料07では本当に「アフリカ」が演奏されたのかについて不確かであるとしています。

 さて「アフリカ」、この5月23日に、計9つのテイクが演奏されました。資料07によれば、二つのテイクを編集したものが、1979年にIZ9361-2(Trane's Mode)としてインパルス!を吸収したMCAから発売されました。11分39秒までは3つ目のテイク(ここでは-30)、残りを最後のテイク(ここではー36)をつなぎ合わせたとのことです。

 さて演奏ですが、この初日での演奏は、この曲の本番である二日目に向けてのスケッチのようなものだととの意見が多いです。ただここでの演奏も、ブラスのアレンジを担当したドルフィーの冴え、コルトレーンの心に刺さるようなテナー・サックスの響きがあり、またベースを二本にしたことにより奥深さが出ており、私には聴き所がる演奏です。



【エピソード、クリード・テイラー その2】

 インパルス!を立ち上げる際のジャズ・レコード業界は、キャピトル、コロンビア、そしてRCAビクターといった大手レーベルがあり、他は独立系にインディーズであった。つまり規模の点で言えば、上と下があり中はなかったのだ。ABCパラマウントは、当然ながらインパルス!を最初からジャズ・レコードのメジャーにしようとしていた。

 プロデューサーのクリード・テイラーは、音楽の内容そのもの以外にも、インパルス!のレコードに魅力づけをする必要ありと考えていた。コーティングされた見開きジャケットであった。ただしこれだと一枚あたり一ドルのコスト・アップとなる。インパルス!のレコードは5ドル98セントとなり、他社より1から2ドルの割高となるのだ。しかしテイラーは、これに拘り、上層部を納得させたのだ。

「LPレコードの顔には二つある。一つはコーヒー・テーブルの上に載っている際の見え方。もう一つは棚に収まっているときの顔だ。どちらの場合でも簡単にレーベルが判別できなければならない」と、テイラーは考えていた。時代の先端をいくカメラマンによる写真と、そしてデザインで、「コーヒー・テーブルの顔」とした。そしてジャケットの背中には黒をオレンジで印象を付けし、「棚の顔」したのだ。

 テイラーはレーベル名もアイデアを持っていた。

 「パルス(鼓動)という社名を思いついて、いろいろ考えていた。この言葉はいい連想を伴っているんでね。スローガンとしては、フィール・ザ・パルス(心を読め)、ザ・パルス・オブ・ザ・ミュージック・ワールド(音楽の鼓動)といったものを考えていた」

 当初から考えていた社名は、「Pulse(パルス)」だった。しかしこの名は他のレーベルが使っていることが分かった。みなが落胆する中で、テイラーは次なる策を考え、そして「impulse!」と、あの印象的なロゴが生まれたのであった。

(資料13より抜粋して引用)



【ついでにフォト】

tp09012-017

2009年、みなとみらい

(2020年12月28日掲載)