19601026-01

Everytime We Say Goodbye
(Cole Porter)    
(5分40秒)



【この曲、この演奏】

 ジューン・クリスティ、エラ・フィッツジェラルド、ダイナ・ワシントン、サラーボーンなどの多くの大物歌手が取り上げているこのスタンダード、ソニー・ロリンズやチェット・ベイカーなどに愛されたこのバラッド、コルトレーンのスタジオ録音は本セッションだけです。

 資料07からこの曲のライブ演奏の記録をみますと、この年の6月10日にNYのJazz Gallaryでの演奏が、本セッション前の唯一のものになります。

 しかし本セッション以後となると、この曲がコルトレーンのライブで、重要な曲になっていきます。1961年11月から12月の黄金カルテットにドルフィーが加わっての欧州ツアー、1962年11月から12月の黄金カルテットでの欧州ツアーで、何度も何度もこの曲が演奏されています。

 特に1961年12月4日には、西独のTV番組でこの曲を演奏し、その様子はビデオが一般に普及した早い時期から世に出回っており、多くの方が目にしたことでしょう。

 また1963年にはペンシルベニア州立大学のシュワブ講堂で黄金カルテットでライブを行い、この曲を演奏した記録が、資料07にあります。

 さて演奏ですが、コルトレーンはソプラノ・サックスで、この愛されている有名曲を丁寧に演奏しています。感情を抑えての演奏と言えますが、その中に複雑な人間の心を表現しており、この曲の名演となっています。マッコイのピアノは、コルトレーンのバックの際も、ソロをとる際も、このバンドでの自分の存在感の表現方法を掴んでいる演奏です。またエルヴィンはこのバラッドを、ブラシでの控えめなバッキングで引き立てています。



【エピソード、本セッション】

 10月21日にエルヴィン・ジョーンズを迎えてスタジオ録音を行ったコルトレーンは、24日には27曲もの録音を行い、さらにこの26日に6曲を録音した。一週間たたない間に38曲も録音したのだ。(24日の27曲中2曲はコルトレーン参加せず)

 その中でコルトレーンのアトランティック・オリジナル・アルバム8枚に収録された割合をみると、21日と24日は4割なのに対して、この26日は8割以上となっており、僅か一週間の中で、エルヴィンを加えたこのカルテットが急成長を遂げたことがうかがえる。



【ついでにフォト】

tp10022-032

2010年、ペナン、マレーシア

(2020年9月27日掲載)