19601024-19

Satellite (John Coltrane)  (5分50秒)



【この曲、この演奏】

 有名なスタンダードに「How High The Moon」という曲があります。ベニー・グッドマン楽団に所属していたヘレン・フォレストが1940年に大ヒットさせた曲であり、多くの歌手に謳われています。またレス・ポールとメリー・フォードが組んで1951年にヒットさせました。また資料14によれば、この曲のコード進行の面白さに目をつけて、ガレスピーがミントン・ハウスでこの曲を取り上げたことによって、多くのジャズマンに浸透していったようです。そしてこの曲のコード進行を基にジャズマンが曲を作っていったそうです。パーカーの「オーニソロジー」と「バード・ラブ」、ホーキンスの「ビーン・アット・ザ・メット」などです。

 資料09によれば、このコルトレーン作の「Satellite」もそんな曲と思われる、としています。本編が「月」なので、このコルトレーン作のは「衛星」にしたとか。

 この曲のコルトレーンの演奏記録は、スタジオ録音は本セッションだけですが、1960年7月にフィラデルフィアの小ボートでのライブで、この曲を演奏したとのことです。(資料07)

 さて演奏ですが、テナー・サックスを吹くコルトレーンはピアノレスでこの曲を演奏しており、コード進行をもとに表現できる可能性を模索しているような、急速な演奏を行っています。確かに「How High The Moon」を感じる部分がありますが、何も前提をつけずに聴けば気付かない程度のものです。

 この日の後半セッションからは唯一 1419(Coltrane's Sound) に収録され、1964年6月に世に出ました。



【エピソード、コルトレーンと望遠鏡 その2】

 「のぞいて見てごらん」といって、彼はナイーマに望遠鏡をのぞかせた。ナイーマはいくつかの星を選んで、翌日の彼の運勢を知る手がかりとなるホロスコープ(天宮図)のデータとした。星占いの結果がよくない場合は、運勢のよい日がくるまではどこにも出掛けないで、ベッドルームで練習するようにするとジョンは誓った。

 こんどはジョンが望遠鏡をのぞく番になると、彼は望遠鏡を星には向けずに惑星、それもとくに一つの惑星に向けて注視した。

 それは赤く不気味に輝く火星である。彼はその色とイメージにすっかり心を奪われていたので、その後かつての雇い主、マイルスのために書いた曲「マイルス・モード」を、彼の好きな火星に敬意を表して「ザ・レッド・プラネット」と改題したほどである。

 神話によれば、火星は軍神を象徴しているのだが、ジョン・コルトレーンは平和な穏やかな人間だったのも奇妙な話だ。(資料01)



【ついでにフォト】

tp06025-052

2006年、香港

(2020年9月11日掲載)