Mr. Knight (John Coltrane) (7分31秒)
【この曲、この演奏】
コルトレーン作の、アフロ・リズムのモーダルなブルースであり、曲名はアール・ボスティック楽団時代の同僚、ジョー・ナイト(p)に因んだものとのことです。(資料09)
また1990年公開の映画「Mo' Better Blues」で、この曲の一部が使われたとのことです。(資料07)
この映画は、架空のジャズ・トランペッター、ブリーク・ギリアムの半生について描かれているとのことです。(ウィキペディア)
この曲のコルトレーンの演奏記録は、資料07によれば本セッションだけです。
さて演奏ですが、リズムにコルトレーン独自の視点を取り入れ、これがインパルス期に繋がって行ったのかと感じるものです。テナー・サックスの演奏自体は手探り感がありますが、コルトレーンのブルース演奏への新展開と考えると、意味あるものに感じます。
この演奏は1962年6月発売の、1382(Coltrane Plays The Blues)に収録されて世に出ました。
【エピソード、コルトレーン・バンドのピアニスト達】
資料03に、スティーヴ・キューンとマッコイ・タイナーについて、次の記述がある。
1950年代後半、コルトレーンは地元フィラデルフィアの若手ジャズメンのあいだでヒーロー的な存在になっていた。コルトレーンは彼らの気持ちを受け入れ、その努力をサポートしたが、自分自身の音楽も確実なものにしなければいけなかった。彼の音楽の中に思うがままに入り込み、彼のやり方に応じて力を注ぎ込んでくれるミュージシャンを、コルトレーンは必要としていた。コルトレーンは一九六〇年夏にピアニストのスティーヴ・キューンと共演したが、キューンのピアノは彼の理想に完全にはそぐわなかった。コルトレーンにとってキューンの伴奏は慌ただしすぎた。
それに対してタイナーの伴奏は、よりまばらで制御されており、それでいて独自の個性を宿していた。タイナーの左手は力強く、彼はそれをハンマーのように使って着実にコードを弾いた。彼自身、自らのタイム感覚を語るのに、”メトロノームのような”という形容詞を使っている。彼はいつも音楽的な構成に正しく即し、それぞれの小説でなすべきことを明確に表現した。グループの中にこの安定感があったからこそ、コルトレーンとエルヴィンはお互いに補完しあいながら、思い通りのパワーを発揮できた。彼らのこのような関連性がグループの特別な推進力を生み出したのだ
【ついでにフォト】
2006年、香港
(2020年9月4日掲載)