Bemsha Swing (Thelonious Monk)
(5分4秒)
【この曲、この演奏】
コルトレーンが多くのことを学んだモンクの曲を、この二日間のセッションの締めに取り上げました。この二日間のセッションはオーネット・コールマンがドン・チェリーと共に作った、新たなジャズの方向性の中での演奏でしたが、最後にモンクの曲を用意したことにはコルトレーンの何らかの考えがあったのでしょう。
コルトレーンはこの曲をモンクとの長期間の共演ライブの中で何度も演奏したことだと思いますが、資料07で確認できる演奏記録は本セッションだけです。
また資料07によれば、アトランティックの公式録音記録には、この曲名を「Bemsha Swing」と記した横に、「Untitled (For Swing(?))」と書かれているとのことです。
さて演奏ですが、この曲の躍動感とともにしているのですが、このセッションのテイストに刺激を与えることはなかったようです。コルトレーンは自分らしさをぶつけていますが、全体の色合いはチェリー色となっています。
【エピソード、読書】
演奏と作曲のかたわら、コルトレーンは自分の時間の多くを読書、ほとんどの場合音楽と関係のない分野の書物を読むことに当てた。本屋をのぞくということはしなかったが、いくつかのブック・クラブに入会して慎重に読書対象を選んでいた。それは、永年彼に影響を与えていた、思索的な知人たちの説得の結果であった。とくに彼が好んで読んだのは、宗教と哲学関係の書物であった。例えば、ソニー・ロリンズは「ヨガ行者の自叙伝」を読むことをすすめたし、ビル・エヴァンスはクリシュナムルティの「人生論集」を推薦した。その他、エドガー・ケイルス、カーリル・ギブラン、エジプトロジー、サイエントロジー、プラトン、アリストテレスなど、数百冊もの本が書棚に並べられ、部屋のあちこちに、そしてテナー・サキソフォンとソプラノ・サキソフォンをおいてあるベッドのそばにも何冊もの本が散らばっていた。彼は寝る前に読書をしたり演奏をするのが好きだったし、それはまた、妻を眠りに誘うセレナーデみたいな役割も果たしていた。
以上は資料01からの引用であるが、時期は記述されていない。全体の文脈からすれば、1959年あたりからのことであると思う。
また文中にある「ブック・クラブ」であるが、ウィキペディアによれば、「読書愛好家の任意団体で、通常有料の会員になると毎月その団体が推薦する本をダイレクトメールにより割安で買うことができると同時に、年間何冊かを買う義務が生じる」とあり、日本でも1960年代に流行ったとのことである。
【ついでにフォト】
2010年、ペナン、マレーシア
(2020年8月10日掲載)