19600410-0405

All Blues (Miles Davis) (12分54秒)



【この曲、この演奏】

 3月22日ストックホルム公演の後半の部、24日のコペンハーゲン公演、そして4月8日のチューリッヒ公演と同様に、この日付変わって4月10日のストックホルムでも最後の演奏曲は、「All Blues」からの「The Theme」でした。

 いつものアレンジで、いつものテンポで、ミュート・トランペットのマイルスが1分半強のテーマを演奏しています。そして場面転換のようにオープン・トランペットで、2分半のソロを展開しています。やはり本調子のマイルスは良いもんだと感じる、演奏内容です。

 続いてコルトレーンの4分超えのソロとなり、その始まりでは、少しは調子が戻ったかなと感じましたが、やはり疲れ切っているコルトレーンでした。ピアノの好サポートを得て、なんとか演奏を終えた感じです。

 演奏は2分半のケリーのソロ隣、マイルスが再びミュート・トランペットを吹いて、終わっていきます。

 そして短い「The Theme」を演奏して、アムステルダムの公演は終わりました。



【エピソード、ブノワ・ケルサンによるインタビュー その10、最後】

ケルサン
 オーネット・コールマンはお好きですか?


コルトレーン
 愛しているよ(笑)。ああ、彼が大好きだね。いつも彼に追いつこうとしている。彼のやっていることが、私のプレイの可能性を広げてくれているんだ。


ケルサン
 独自の世界がある。


コルトレーン
 うん?


ケルサン
 彼には独自の世界があると・・・


コルトレーン
 オーネットにかい?


ケルサン
 オーネットには。とても知的で、新鮮で、誠実ですが・・・


コルトレーン

 彼は美しいよ。


ケルサン
 ええ、美しいジャズマンです。それに音楽への造詣が深い。ああいったアプローチはちょっと知的だとは思いませんか? 素敵ですよね。いいと思います。


コルトレーン
 まあ、私は彼に借りがあると思う。というのも、実は彼が登場した頃、私は先へ進みすぎて次のゴールを見失っていたんだ。コードという枠組みを捨てるべきなのかも分からなかった。いや、実際に捨てようとは思わなかったが、とにかくそこへ彼が現れた。彼の音楽を聴いて、思わずつぶやいたよ。「ああ、これが答えなんだ」ってね。今の私にはわかる。確かにあれが答えだった。私たちがやっていること、例えば演奏にしても・・・まあ、今のバンドにはピアノがいるから、そこは考えないといけないが。私たちの音楽において、ピアノの存在は無視できない。ただ、最終的にそこから得られるものが減り、ごくわずかになってしまったたら、全て同じようにやるのはワンパターンだ。だから、たぶん、将来的には、オーネットのような曲をやるかもしれない。メロディは別にして、ピアノの伴奏をすべてなくしてしまうとか。ソロに関しては伴奏なしでやるとかね。


ケルサン
 なるほど。雰囲気だけ決めて走り出すと。


コルトレーン
 うん?


ケルサン
 雰囲気だけ決めて、走り出す。


コルトレーン
 そう。


ケルサン
 確かに、そうなると現代音楽のある側面に近づきますね。いわゆるクラシカルな現代音楽というやつです。


コルトレーン
 うん?


ケルサン
 なら、多かれ少なかれ、現代のクラシック音楽に近づいていると。ああいった形の自由に。


コルトレーン
 ジャズ界の今の動きのことかい?


ケルサン
 そうです。ただ、ジャズにはもっと深い何かがありますね。


コルトレーン

 ああ。ジャズは今でも・・・それを保ち続けている。それが一体何であれ、確かに存在し、それがジャズの原動力となっている・・・そういったフィーリングが。いずれにせよ、はっきりと定義するのは難しいな。


ケルサン

 このあとヨーロッパへ行くそうですね。


コルトレーン
 ああ。


ケルサン

 フランスですか? 場所はもう決まっているんですか?


コルトレーン
 いや、まだどこへ行くかは分からない。フランスには行くだろう。ロンドンにも。ただ、あとは分からないな。


ケルサン

ブリュッセルには必ず来てくださいよ。会いに行きますから。


コルトレーン

 そうなんだ?(両者笑う) 頭に入れておくよ。


ケルサン
 プロモーターが駄目なら、私がギャラを払いますから。


コルトレーン
 はは、どうも。


ケルサン
 私がなんとしても・・・


コルトレーン

 ありがとう。


ケルサン
 ・・・はい、どうもありがとうございました。


コルトレーン

 こちらこそありがとう。


(資料04より、時期は1961年の夏か秋だろうとのこと)



【ついでにフォト】

tp06005-054

2006年 香港 


(2023年6月20日掲載)