19590505-05,07

Giant Steps (alternate take)
(John Coltrane)


【この曲、この演奏】

3月26日にはこの曲を8回演奏しながら満足の域には遠く及ばず、この日の演奏となりました。

 この日の演奏については、三つのテイクを聴くことが出来ます。しかしながら、この曲はこの日に6回演奏されたようです。


-05 Take 3, incomplete (4分6秒)

 やはりトミー・フラナガンにアート・テイラー、この二人にチェンバースというリズム陣ですので、コルトレーンのアドリブは狂騰していきます。それが技術的な凄さだけではなく、音楽として高い所にあることが、多くのジャズファンを惹きつけ続けている理由なのでしょう。

 さてこのテイクが演奏中断となった理由は、フラナガンがソロの途中で手が止まったからです。名手フラナガン、この時期には多忙を極めていたフラナガン、バッキングはお見事となっても、この曲でのソロとなると難しさに直面したのでしょう。


-07 Take 6, alternate (4分55秒)

 手応えある演奏を録り終えた後に、念のためにもう1回となったのでしょう。コルトレーンは思い描いたソロが出来た後ということで、更に違う姿を追い求めているようですが、少し空回りの感は仕方ないことでしょう。

 そんな状況でもお見事なフラナガンのバッキング、それもソロとなるとコルトレーンの飛ばし過ぎの前でどうしようかなとの演奏となり、そこにコルトレーンが割り込んで演奏は終盤に向かいます。

 この3つのテイクを、スタジオの雰囲気を頭に浮かべながら続けて聴くと、なかなか楽しいものです。



【エピソード、マーティン・ウィリアムス】

 〈ジャイアント・ステップス〉・・・それはコルトレーンがリーダーとして初めてレコーディングしたアルバムのタイトル曲だが、ブリッジにしたBフラットとともに、Eフラットのペダル音で難しい巧みな変化を織り込み、独奏者がいずれかを選んで演奏できるようにした曲である。

マーティン・ウィリアムス


 資料01にある、ジャズ評論家の大御所であるらしいマーティン氏の言葉である。当時のジャズ作品にはない曲であり演奏は、コルトレーンが辛苦を舐めた下積み時代からコードについて勉強に研究を、そして練習を重ねた成果であることが、このマーティン氏の言葉から(私には何となく)理解できる。


【ついでにフォト】

tp10011-207

2010年、ペナン、タイプーサム


(2020年6月28日掲載)