19590504-01

Spiral (John Coltrane) (5分58秒)



【この曲、この演奏】

 コルトレーン作のこの曲は、半音づつ下がっていくスリル感ある曲であり、コルトレーンの重要レパートリーとなって然るべき曲と思いますが、資料06によれば演奏記録は二回だけです。それは本セッションと、1960年7月22日のフィラデルフィアのショウボートでの、私家録音が残っているライブだけです。

 螺旋階段を駆け下りていくスリル感と疾走感を、コルトレーンは見事に演奏しきっています。そしてソロにおける想像力の塊は、一度聞けばこの曲が頭から離れなくなるものです。これにはこれを支えるリズム陣の、熱気溢れる演奏によるものが大きいのでしょう。特にベースとドラムの演奏は、そこだけに意識を集中させて聴くだけでも興奮するものです。またトミフラにはソロ・スペースが与えられ、期待に応える演奏となっています。

 この曲の演奏を聴くだけでもこのセッションの充実ぶりが分かり、そうすると3月26日のセッションの寂しさがより目立ってしまいます。

 さらに付け加えるならば、このセッションも3月26日同様に別のテイクの存在があるならば、それを聴きたいのですが、有無を含めて火災での消失で敵わぬ希望となってしまいました。



【エピソード、このセッションに関する各情報について】

「Countdown」について、録音日

 資料07には「Countdown」2回の録音日について、「以前は5月5日とされていたが、資料16により5月4日である」と記述されている。確かに資料06でも資料09でも、5月5日の演奏となっている。

 そして従来は5月4日録音とされていた「Cousin Mary」が、この資料16により5月5日録音となったのである。これはマトリックス番号3464の「Countdown」と、3469の「Cousin Mary」からすれば、本来ならば誰もが想像できる範囲のことだ。

 しかしながらアトランティックが「ジャイアント・ステップス」を1960年1月に発売した際に示した情報に、この2曲の録音日の取り違いが起きた。そこでジャズ評論界においては、5月4日録音とされた「Cousin Mary」のマトリックス番号については、「混乱のため番号を付け忘れ、後から4日と5日の最後の演奏曲(Giant Steps, 3468)に続けた番号を付した」との見解が一般的なものになっていた


「Sweet Sioux」のについて

 このセッションでのこの曲の演奏記録は1983年発行の資料09にも記載されているので、知れ渡っていた事実なのであろう。そしてその資料09には、「未発表のオリジナルで詳細は全く不明」となっている。この曲の作者はコルトレーンであるとしているのは、この資料09だけである。

 資料07ではこの録音は、1976年のアトランティック倉庫の火災で紛失」したとなっている。私はこのことには幾つかの視点から疑問を持つが、資料07の記述に従うべきであろう。



【ついでにフォト】

tp10022-050

2010年、ペナン


(2020年5月27日掲載)