Flamenco Sketches (take 7)
(Miles Davis) (9分21秒)
【この曲、この演奏】
この曲の七度目のトライのこの演奏、最後までの演奏としてはテイク1とこれになります。
どこまでも透明な空気の中で、テイク1と比べるとその重みが増している、聴く者を包み込む力が増している感じがします。マイルスとエヴァンスの呼吸が、より一層あってきたのでしょう。
コルトレーンとアダレイのソロは、そんな空気感により一層溶け込んだ演奏です。
マイルスのミュート・トランペットとエヴァンスのピアノによる、静と美の極みがここに生まれました。
【エピソード、モードについて】
マイルス・デイヴィスのアルバム「カインド・オブ・ブルー」のレコーディングが行われたのは一九五九年の春だった。この比類なくリリカルなアルバムはジャズ史に屹立しており、第二次世界大戦以降、もっとも人気の高いジャズ・レコードとなった。コルトレーンはそれまでの五年間、すでにいくつかの転換を経験していたが、このアルバムは彼にとってさらなる転換点となった。
そこで演奏されているのは表現力豊かな美しい音楽であるが、意図されたものはきわめて単純明快だ。「マイルスが『カインド・オブ・ブルー』で使ったモードはこうだ」とジョージ・ラッセルは説明する。「彼はリディアン・モードに注目した。そして『ここに五つのモードがある。これらに基づいて、思うがままに、できるだけ長く演奏しよう』と言った」(ここで語られている自由な演奏が純粋に実践されたのは、このアルバムの中で〈フラメンコ・スケッチ〉一曲のみである。その他の曲はすべてあらかじめ決められた形式が用いられている」。
「つまり、ミュージシャンにとってコードの束縛がいっさいないんだ。これらのモードはコードでもあるわけだからね。コード・モードだよ。マイルスは『ソロイストはそれぞれのコードに二つのビートがあるなんてことは考えず、このコードだけでできるだけ長く演奏しろ』と指示したんだ」
(資料03)
【ついでにフォト】
2013年 みなとみらい
(2022年7月15日掲載)