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Naima (John Coltrane)




【この曲、この演奏】

 続けてコルトレーンは、彼の代表曲の一つである「ネイマ」の演奏に入りました。この曲も恐らくは、コルトレーンが新天地での活動のために温めていた曲なのでしょう。

 このセッションでは6回に渡る録り直しを行いました。その中で最後まで演奏したのは、3回目、5回目、そして6回目のテイクでした。結局のところ、アルバム「ジャイアント・ステップス」には本セッションの演奏は収められませんでしたが、3回目の演奏は1975年に世に出たアルバム「Alternate Takes」に収録されています。他の五つのテイクは1995年に世に出た「The Heavyweight Champion john coltrane」の、「7枚目のCD」に収められました。

 ここではその五つのテイクについて触れます。


-09 Take 1, incomplete (3分19秒)

 静の中での心の叫びをどのように表現して行くのかを、コルトレーンは探りながら演奏しています。バックはほぼチェンバースのベースで、ピアノとドラムはベースに寄り添っている感じがします。このテイクは「incomplete」となっていますが、考えていた尺はほぼ全て演奏し切って、最後の決めで迷いが出ての演奏中断といったところです。


-10 Take 2, incomplete (3分24秒)

Take 1 と同様に、演奏の終わり方に考えがまとまらなかったようです。コルトレーンのテナー演奏に、音の乱れもありました。


-11 Take 4, false start (14秒)

本セッションでのOKテイクの後の演奏ですので、セッション中にはTake 3 にも不満点があったのでしょう。この4回目は、ドラムの入り方にコルトレーンは不満なのか、すぐに演奏を中断させました。


-12 Take 5, alternate (3分50秒)

最後まで演奏されており、コルトレーンとしては音の広がりに Take 3 とは違うものを求めた演奏だと思いますが、Take 3 より劣るとは言えませんが、決して上回っているものではありませんでした。


-13 Take 6, alternate (3分37秒)

もっと良く表現できるだろうとの気持ちで、コルトレーンはこの6回目の演奏を行なったのでしょう。でも演奏中のコルトレーンは、違うな、そうではない、との気持ちがあったのかと思います。演奏は最後まで行っていますが、このメンバーではこの曲はここまでかな、との思いで次の曲に移っていったと感じました。



【エピソード、アトランティックの倉庫が火災】

 レコード会社の倉庫が家事となり、レコード会社の命であるマスター・テープが焼失した悲しい出来事は、音楽愛好家にとっても辛い出来事である。2008年に米カリフォルニア州ロサンゼルスのユニバーサル・スタジオ・ハリウッドで起きた火災で、50万曲分が焼失したことは、大きなニュースとなった。

 アトランティックのニュージャージー州ロングブランチのテープ倉庫が、1978年(注1)に火災となり、6000リールほどのマスターテープが焼失した。アルバムとして発売した分のマスター・テープはニューヨークに保管されていたので無事だったが、未発表や別テイク、あるいはリハーサルのマスターテープは焼失となった。その中にはコルトレーンのも含まれていたのだ。この件は火災から時間が経ってから、知れ渡った。(ウィキペディアより)

注1

 「The Heavyweight Champion john coltrane」内での記述では、火災年は1976年が正解のようだ。このことは、火災が一定期間、世間に知らされなかったことからの、間違いなのであろう。



【ついでにフォト】

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2009年、みなとみらい


(2020年4月28日掲載)