19590302-14

Blue in Green (Miles Davis - Bill Evans)
(5分32秒)



【この曲、この演奏】

 資料07や資料09には、この曲はマイルスとエヴァンスの共作となっています。

 資料08で見る限りでは、この曲のマイルスの演奏記録は本セッションだけであり、コルトレーンも本セッションだけの演奏記録(資料07)です。

 5回の録音の試みの後に、この本テイクが演奏されました。

 張り詰めた空気の中で輝く美しさのマイルスに、エヴァンスのそれも加わり、この極上の世界ができあがりました。ジャズで数多くの美しい瞬間があるのでしょうけれど、このでの美しさを他では聴けないものです。

 ミュートのマイルスの後にエヴァンス、そのエヴァンスに包まれるようにコルトレーンがソロを取っています。「コルトレーン特有の詩情とはまた違った美しい表情を、まるで言葉を失った後のため息のようにのぞかせる」(資料09)その演奏は、コルトレーンがこの世界に入り込めたことを物語っています。



【エピソード、テオ・マセロの回想】

 コロンビア・レコードのジョージ・アバギャンの後任となったテオ・マセロは、プロデューサーだが、同社に雇われた数少ないサラリーマン・ミュージシャンの一人でもあった。彼はミンガスなどと一緒にテナーで仕事をしていた。また彼はジリアード音楽院でマスターの学位をも取得していたが、父親が「スピーク・イージー」を経営していたので、生涯の大部分をミュージシャンたちと送るはめになった。そんなわけで彼が「カインド・オブ・ブルー」をマイルスとの共同作業でつくりあげた時にも、別に大騒ぎせず、逆に気楽というか、自由に仕事ができたのである。

 マセロの記憶によると、「音楽のことは別にして、私がコルトレーンについて覚えているのは、彼が心の優しい男だったということだ。自分の好きなフレーズをマイルスが演奏すると、コルトレーンはまるで少年のような微笑みを浮かべていた」(資料01)



【ついでにフォト】

tp13036-111

2013年 みなとみらい 


(2022年7月13日掲載)