Bags & Trane (Milt Jackson) (7分27秒)
【この曲、この演奏】
このひねりと工夫を織り込んだ曲は、ミルトがこのセッションのために準備したものだと思います。演奏記録としてはミルトも(資料08)もコルトレーンも(資料06)も、本セッションだけです。
深遠な広がりを感じさせるミルトの演奏には、このセッションとこの曲への意気込みを感じさせるものがあります。やはりこのセッションのリーダーは、ミルト・ジャクソンだと感じさせるものです。コルトレーンの演奏には、彼が積み重ねてきた独特のフレージングが十分にいきたものであり、またこのセッションをいいものに仕上げたいとの意思が感じられます。
そうでありながら、ハンク・ジョーンズの短いソロを聴いていると、コルトレーン抜きならどういう演奏になったかと考えてしまします。
最後のミルトとコルトレーンの4小節交換における二人の色合いの違いは、聴き手は素直に楽しむべきでしょう。
【エピソード、録音技師 Tom Dowd】
アトランティックから発売されたコルトレーンのリーダー作品は8作あるが(後年の未発表系は除いて)、その7作品の録音技師はトム・ダウドである。3作品はトム・ダウドが単独でクレジットされており、他の4作品はPhil Iebleと共同でクレジットされている。(因みにトム以外での1作品はole であり、録音技師はPhil Ramone)
録音技師との面でコルトレーンを見ると、ルディ・ヴァン・ゲルダーのプレスティッジ時代、トム・ダウドのアトランティック時代と言える。そのトム・ダウドについて、ウィキペディアにある経歴は、次の通りだ。
コンサート・マスターの父とオペラ歌手の母との間に、トム・ダウドは1925年にマンハッタンで生まれ、幼少期にはピアノ、チューバ、バイオリン、ベースを弾いていた。彼はやがてコロンビア大学に進み、そこではバンド演奏を行っていましたが、物理教室に所属していた。18歳で彼は軍曹の階級で徴兵され、マンハッタン計画にも関わった。
戦後には彼はクラシック音楽のレコーディング・スタジオで仕事をしながら、アイリー・バートンのヒット曲を手がけ、すぐに録音技師として先頭を走るようになった。
その後も数多くのミュージシャンを手がけ、また音楽プロデューサーとしても活躍した。
アトランティック・レーベルに所属していた正確な時期はウィキペディアにはないが、同レーベルを一流レーベルにしたことに彼は大きく関わっていたようだ。因みに彼が関わったミュージシャンとして、次の名前がウィキペディアに掲載されている。
Bee Gees, Eric Clapton, Lynyrd Skynyrd, Black Oak Arkansas, Derek and the Dominos, Rod Stewart, Wishbone Ash, New Model Army, Cream, Lulu, Chicago, the Allman Brothers Band, Joe Bonamassa, the J. Geils Band, Meat Loaf, Sonny & Cher, the Rascals, the Spinners, Willie Nelson, Diana Ross, Eagles, the Four Seasons, Kenny Loggins, James Gang, Dusty Springfield, Eddie Harris, Charles Mingus, Herbie Mann, Booker T. & the M.G.'s, Otis Redding, Aretha Franklin, Joe Castro
勿論、コルトレーンもその一人である。
【ついでにフォト】
2005年、香港
(2020年3月9日掲載)