19580326-05

By The Numbers (John Coltrane)
(12分6秒)



【この曲、この演奏】

 コルトレーン作となっているこのスロー・バラッドで、資料06を見ますとコルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。「号令に合わせて、型どおりに、機械的に」等の意味が曲名にありますが、ジャズの曲には不似合いのような気がします。

 憂鬱な夜を過ごしている気分での演奏は、それは味のあるものです。12分と言う長丁場のこの演奏の、前半はガーランドの一人舞台となっております。シングル・トーンとブロック・コードを巧みに配して、レイジーなブルースの世界を聴かせてくれます。ここで長々とブルースを聴かせるガーランドは、熱心なガーランド好きからは高い評価を受けているようです。もちろんコルトレーンも魅力ソロをとっていますが、ガーランドの深い世界から自分の世界へ流れを作るのに、最初は戸惑っているかなと、私は感じました。最後にまたガーランドが決めて、12分が終わります。コルトレーン作なのですが、私はガーランド作の曲かなと感じました。

 さて最後にこの演奏について二つばかり。資料06にあるワインストックのログ・ブックには、「Slow Blues (1492 Blues)」と記されており、その下に「By The Number - 7356」と小さな文字で書かれ、両者を丸で囲っています。この「Slow Blues」も「1492 Blues」も、コルトレーンとガーランドには演奏記録がなく、このログ・ブックの意味は分かりません。

 もう一つが、プレスティッジはこの12分の演奏を、シングル盤で発売していました。「45-394」との企画番号で、A面にPart 1、B面にPart 2として収録しています。ただし「Discogs」というサイトからの情報では、A面が3分50秒、B面が3分45秒となっています。4割ほどをカットしてのシングル盤発売のようですが、そこをカットしたかはこのシングル盤を見つけ出すしかなく、それはとてつもない労力を要するものです。

 曲名の意味することは最後まで掴めないままでした。



【エピソード、A.ブルームのインタヴュー、1958/6/15、その7】

(JC=ジョン・コルトレーン、AB=オーガスト・ブルーム)(資料04)


AB 話は変わるけど、ここ何年か一緒にプレイしたり、演奏をきいたりしてきた中で、君がもっとも尊敬する現代のミュージシャンは誰だい? 君もその一人だとは思うけど、モンクは確実にそのカテゴリーに入るだろうね。だって昨晩、君はモンクが真の貢献者で、偉大な作曲家であるという事実に大きくうなずいていたから。彼は人々に伝える何かを持っていると。他にそういったミュージシャンは思いつく?

JC そうだな・・・・好きなミュージシャンなら何人か挙げられるが、とても全員は挙げられない(笑)。

AB そういうもんさ。

JC そうだな。全員は挙げられないことを前提に言うと、ホレス・シルヴァーなんかがそうだ。偉大なソロイストは他にも大勢いる。マイルスとかソニー・ロリンズとか。モンクのようなミュージシャンは、私にとってはソロイストなんだ。その上で、いい曲をたくさん書ける。彼のような男は稀だね。チャーリー・パーカーもそういう一人だ。彼は楽器も弾けて、曲も書けた、何曲もね。ディジーもたくさん書いたな。



【ついでにフォト】

tp10014-004

2010年、ペナン、タイプーサム


(2020年2月3日掲載)