19580307-04

I Never Knew (Fiorito - Kahn)  (7分6秒)



【この曲、この演奏】

 バンド・リーダーのテッド・フィオリットが作曲した軽快なラブ・ソングで、1926年にジーン・オースティンがヒットさせ、またペギー・リーの映画でも使われた曲です。(資料14)

 資料06によれば、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。

 バレルのアーシーで軽やかなギターでこの曲の演奏の色合いを決めた後に、その色合い通りのコルトレーンとトミフラの演奏が続く内容です。このセッションが和気あいあいとしたものだと、実感できる内容です。



【エピソード、A.ブルームのインタヴュー、1958/6/15、その3】

(JC=ジョン・コルトレーン、AB=オーガスト・ブルーム)(資料04)

AB 哲学に興味を持つ前は・・・

JC 何でも答えるよ。

AB 哲学のことを考えるようになる前は、君はその・・・

JC ああ、そういう話か。きっかけは宗教だな、たぶん。(聞き取れず)そう、最初は宗教への疑問から始まった。それが事の発端だ。大人になって、いろいろ考えるようになったというか。

AB どういう宗教環境で育ったんだい?

JC メソジスト派だ。

AB メソジスト? 宗教に厳格な家庭だったのかい、それとも・・・。

JC まあ、厳しかったな。厳しすぎたとは言わないが、厳しかったのは確かだ。祖父と祖母はともに司祭だった。母はとても信心深かった。だから子供の頃は、毎週日曜になると教会へ行っていた。祖父の影響が強かったんだ。彼が我が家の支配者だった。世知に長けていて、政治もうるさかった。父はそうでもなかった。仕立屋で、口数の少ない人だった。要は仕事一筋に生きてたのさ。けど祖父の方は、好戦的というかね。政治とかそういうことに傾倒していた。宗教は彼の仕事場だった。私はそういう環境で育ち、たぶんそれを受け入れていた。何かを感じ取っていたというか。それから二十歳頃になって、そうした“何か”から逃げ始めた。大人になって、宗教に関するいろんなことに疑問を持ちようになった。宗教について考えるようになったんだ。その二、三年後、たぶん二二、二三歳のときにイスラム教に出会った。衝撃的だった。友達が大勢イスラム教に改宗してね。だから私もそうしようかと思った。イスラム教のおかげで、私はそれまで考えもしなかったことを考えるようになった。別の宗教のこととかね。だから、それをきっかけでいろいろと考えるようにはなったが、実行には移さなかった(笑)。考えただけで、忙しくて他のことには構っていられなくて、そのうち忘れてしまった。数年間はそのことを頭の中から追い出していた。敢えて考えようとも思わなかった。だが、最近決めたんだ。物事を掘り下げてみたくなったというか、私にも、他の人の考えが理解できるんじゃないかと思ってね。結局のところ、それが私がやろうとしていることだとだって気づいたんだ。それで哲学とかに興味を持ち始めた。時間がなくて、そのことにかかりっきりというわけにはいかないし、本当は哲学のことをもっと深く、幅広く学びたい。もっといろんなことを知りたいんだ。自分の考えを一つにまとめて、本来あるべき姿を見出したい。私はずっと信仰的な男だった。昔から。世の中には多くの宗教が存在することを知ったとき、私は失望して・・・。



【ついでにフォト】

tp08059-100

2008年、みなとみらい


(2020年1月28日掲載)