Sid's Ahead (Miles Davis) (12分58秒)
【この曲、この演奏】
マイルス作となっているこの曲ですが、資料07や資料09ではこの曲は「Walkin'」にそっくりな曲と指摘しています。「Walkin'」ならば作者は R. Carpenter です。
この曲名での演奏はマイルスもコルトレーンも、このセッションの他には、この年のライブで数回の演奏があるだけです。(資料07、08)
また資料09にこの演奏について、「ガーランドがこの曲の録音に遅れてきた為コルトレーンとアダレイのバックで不明瞭なハーモニーをつけるピアノはマイルスであるという」とあります。
さて演奏ですが、黒い影に覆われていくような気分になるテーマでの三管のアンサンブルが、印象的なテーマとなっています。ソロはコルトレーン、マイルス、アダレイ、そしてチェンバースと、長尺の演奏を行なっています。コルトレーンとマイルスのそれは、テーマでの黒い影を感じさせる深みのある演奏です。アダレイのソロも良いのですが、間を持て余す様子を感じさせる場面があるのが、残艶な点です。マイルスとフィリー・ジョーの八小節交換があり、テーマへとなり、演奏は終わります。
曲自体は「Walkin'」なのですが、マイルスの他での演奏とは空気感が違う演奏です。この辺りが、別の曲名にした理由なのかと感いました。
この演奏はアルバム「Milestones.... Miles Davis」への収録となりました。
【エピソード、本セッション】
アルバム「Milestones.... Miles Davis」制作のための2回目のセッションであり、2月4日との二日間でこのアルバムをマイルスは完成させている。
この2回の間の2月7日にコルトレーンは、初のワン・ホーン・カルテットでのリーダー作「ソウルトレーン」の録音をおこなっている。このコルトレーンのレコーディングの流れを見ると、彼がいかに波に乗っているかが分かる。
モード手法へのアプローチについて、資料09に次のコルトレーンの発言がある。
「このアプローチだと、ソロイストはコーダル(垂直)な演奏とメロディアス(水平)な演奏のどちらを選んでもいいことになる。マイルスの音楽は私にめいっぱい自由を与えてくれた」
【ついでにフォト】
2008年、みなとみらい
(2022年4月13日掲載)