19580207-02

Theme For Ernie (Fred Lacey) (4分57秒)




【この曲、この演奏】

 この曲は、フィラデルフィア出身のフレッド・レイシーが、この少し前に亡くなったアルト奏者のアーニー・ヘンリーに捧げた曲です。(資料11)

 コルトレーンのこの曲の演奏記録は、本セッションだけです、(資料06)

 哀悼の「哀」も「悼」も、「悲しんで心をいためる」との意味、それを重ねて用いるのですから相当に強い意味なのです。もちろんこれは日本語での話ですが、この演奏にはコルトレーンのアーニーに対する「哀悼」が感じられるものです。フレッド・レイシーの書いたメロディを大切にしながら、そこに自分の気持ちを込めていくコルトレーンの演奏には、凛とした姿を感じます。

 最後に資料11でのこの演奏へのコメントを紹介します。

 「コルトレーンはメロディを手厚く抱擁するように演奏するが、これはきっと昔のボスのジョニー・ホッジスから譲り受けたもの」



【エピソード、トニー・ラリー、セルマーの営業マン】

 「本当のことをいうと、君のやっていることはぼくにはさっぱりわからない。でも君自身本当に何をやっているのかわかっているのかいコルトレーン?」

 セルマーの営業マンのトニー・ラリーは、自身もテナー・サックスを少しやり、サキソフォンのテクニックについては教師なみの実力を持っていた。

 1955年の秋に彼がシカゴのホテルにいたマイルスと商談のために会ったとき、マイルスにセルマーのトランペットを売り込むことで懸命であったので、コルトレーンに会うことは考えていなかった。

 トニーはコルトレーンにサックスを売りつけたかは覚えていなかったが、コルトレーンがセルマーのサックスを使っていたことはよく覚えていた。トニーはコルトレーンが演奏する楽器は不良品に違いないと思い、楽器の検査をコルトレーンに申し入れたのだった。

 冒頭のトニーの言葉は、その時のものだ。

 コルトレーンはトニーの質問に答えるため五線紙を取り出し、コード進行などをスラスラと書き、トニーに説明したのであった。説明が終わるとトニーはコルトレーンにこう言った。

 「君がやっていたことがなぜわからなかったか、やっとはっきりしたよ。私がそれを理解できなかったのだ。だが今は理解できるから、君がやっていることがよくわかるよ」「と思うのだが・・・」(資料01)



【ついでにフォト】

tp09066-084

2009年、ペナン、マレーシア


(2019年11月30日掲載)