Under Paris Skies (Giraud - Drejac)
(7分47秒)
【この曲、この演奏】
この曲はシャンソンの世界では有名な曲であり、他の世界の方々も取り上げている曲のようです。アメリカのポップス界のスターでしたアンディ・ウィリアムスのが有名であり、ジャズ界でも取り上げている方がいるようです。
この曲のコルトレーンの演奏記録は、本セッションだけです。
冒頭のテーマではコルトレーンがテナー・サックスの中音域の魅力を生かした演奏を聴かせ、その後のドレイパーのソロはチューバの低音域を聴かせる朴訥とした演奏、そして続くコルトレーンのソロはテナー・サックスの高音域の魅力をダブルタイムで聴かせるもので、この流れだけで楽しめる演奏です。しかし仕掛けはこれからで、「アルルの女」を使っての一幕を入れて、再びコルトレーンとドレイパーの魅力を味わえるものです。
この数年後にはLAとロンドンで数十年に渡って編曲の世界で活躍したドレイパーさんと、研究熱心なコルトレーンが会得してきた音域による魅力とが合わさっての、この演奏に繋がったのかと思います。
【エピソード、本セッション】
まずは本セッションの主役であるチューバ奏者のレイドレイパーの経歴を、「新・世界ジャズ人名辞典」より紹介する。
1940年にNYに生まれた彼は、早くからチューバの天才少年と知られており、1956年から1957年には自己のグループでバードランドに出演していた。その一方で彼は、オーケストラでの作編曲でその才を示していた。1958年から1959年にはマックス・ローチのグループに参加していたが、1960年代以降はLAで映画関係の仕事に専念していた。ジャック・マクダフのBN盤へのスコアの提供などの活動も残していた。1969年には渡欧し、ロンドンを舞台に幅広い音楽活動をしていた。1980年頃に帰米し、1982年に42才で亡くなった。
次に本セッションについて、資料11には次のようにある。
コルトレーンのこの年最後のプレスティッジ(正確にはNJ)セッションを飾るのは、チューバとテナーという、大変毛色の変わったフロント・ラインである。新人のリーダー、チューバ奏者のレイ・ドレイパーは、伝えられるところでは、高校生でコルトレーンと知り合い、コルトレーンからこの録音のための準備を手伝ってもらったという。そのアレンジは、重苦しくなりがちなこの編成から、なるべく多くのヴァラエティを引き出そうという試みがみて取れる。
コルトレーンはこの録音に親愛を持って接しており、彼が全てのセッションを真剣にとらえていたことが今更ながらに伺える。
コルトレーンとレイ・ドレイパーの共演は2回あり、本セッションとその一年後のジュビリー・レーベルへのセッションである。両セッション共に、レイ・ドレイパー名義でLP化されている。(資料06)
リズム陣は知名度のない3人だが、ピアノとベースの二人は「新・世界ジャズ人名辞典」に名前がある方だ。
コルトレーンとの共演については、ピアノのGil Cogginsは、1957年のマイルス・バンドでの共演歴がある。ベースのJames "Spanky" De BrestとドラムのLarry Ritchieとは、1958年のレイ・ドレイパーのジュビリーでのセッションで、コルトレーンは顔を合わせている。さらにベース奏者とコルトレーンは、1959年春のケニー・ドーハムのセッションで一緒に演奏している。この情報は、1991年7月4日に資料06の編者が大阪ブルーノート出演中のシダー・ウォルトンから聞き取ったものだ。(資料06)
【ついでにフォト】
2006年、香港
(2019年10月31日掲載)